カテゴリー: 書籍

なんみんハウス資料室便り 4号

パトリック・キングズレー(藤原朝子訳)『人類に突きつけられた21世紀最悪の難問 シリア難民』ダイヤモンド社、2016年11月

こんにちは。なんみんハウス資料室室長のnonomarunです。

資料室には暖房器具がないので、下の事務所に本を移動して整理していますが、なんみんハウスの階段を大量の本をもって上がり下がりするのは、かなりの緊張感を伴い(わかってくださる方、多数いますよね?)、それだけで作業を終えた充実感が得られてます(というのを、整理作業が進まない言い訳にしときます 笑) 

見かねて、シェルター入居第1号の中東難民Aさんが本を運んでくださったり。そのついでに、RAFIQロゴの書き方を特訓してもらったり。     

パトリック・キングズレー(藤原朝子訳)『人類に突きつけられた21世紀最悪の難問 シリア難民』ダイヤモンド社、2016年11月

プロローグ ハーシムの「旅」のはじまり

第1章       祝えなかった誕生日 ハーシム、シリアから脱出す

第2章       その「荷」は生きている 「第2の海」サハラを越える砂漠ルート

第3章       魂の取引 密航業者のモラルとネットワーク

第4章       屈辱からの出航 ハーシム、密航船に詰め込まれる

第5章       転覆か、救出か なぜ危険だとわかっている航海に乗り出すのか

第6章       ストレスだらけの「約束の地」 ハーシム、ヨーロッパで戸惑い逃げる

第7章       運命を司る「見えない線」 国境に翻弄される難民とEU

第8章       訪れた最後の試練 ハーシム、待ちわびた瞬間まであと一息

第9章       「門戸」を閉ざされて 根本から解決する方法はあるのか

第10章     世界に「居場所」を求めて ハーシム、難民認定を待つ

エピローグ そのあと起きたこと

日本の読者のために ——難民危機の最新情報

訳者あとがき

参考文献

著者は『ガーディアン』紙初の移民専門ジャーナリスト。シリアからエジプトに家族で逃れたハーシム。地中海を密航船で越えイタリアに上陸し、そこから当時難民認定がされやすく家族を呼び寄せることができるとして希望の国であったスウェーデンまで、ハーシムがひとりで様々な危険を乗り越えてたどり着くまでの克明な記録に加え、密航業者の実態やアフリカ側で待機する難民待機所の地獄のような日々、欧州各国の難民排斥政策を拒絶し、一個人として黙々と難民を救助する市民などもリポートしています。詳しくは読売新聞』書評が紹介されていましたので、そちらも参照ください。 http://www.yomiuri.co.jp/life/book/review/20170131-OYT8T50060.html

著者が提言する欧州の難民問題解決法の部分だけでも是非読んでみてください(285-290頁)。非常に現実的で示唆に富みます。そして日本語版に寄せてくれた著者からのメッセージ「日本の読者のために」では、日本の難民政策について、彼個人の意見が述べられています。

最後に、ハーシムからのメッセージの一部を。「……戦争の恐怖、故郷を追われた苦しみ、おんぼろ船で海を渡るつらさとトラウマ、新しい習慣や文化に適応する難しさ、未来への不安、子供たちと家族の心配—−。そうした大変なことはたくさんありましたが、私は多くのことを学びました。なかでもいちばん大きかったのは、どこに行っても必ず、この暗闇をがんばって突き進もうという希望と決意を与えてくれる人たちがいたことです。……そして世界をよりよい場所にしようと努力している、あらゆる国、宗教、仕事の女性と男性にご挨拶し、愛を送ります。」

カテゴリー: 書籍

なんみんハウス資料室便り 3号

手島悠介『親切キップだ かぎばあさん』岩波書店(フォア文庫)、1998年7月 ★ひらがな付き

こんにちは。「なんみんハウス」資料室担当のnonomarun室長です。

まずは、たくさんの書籍の寄付が持参&郵送で届きました。資料室には今回ご紹介するような本も置いていくつもりです。是非是非ご不要な本のご寄付をよろしくお願いいたします。

手島悠介『親切キップだ かぎばあさん』岩波書店(フォア文庫)、1998年7月 ★ひらがな付き

知也のクラスでは小学三年生の最後の思い出に「親切運動(アサリの貝殻の中に名前を書いてクジにして、その名前があたった人に親切をする)」をすることに。知也が当たったのはカンボジア難民のミントン。ミントンは向こうでは三年生だったけど日本では一年生になり、がんばって勉強をして今は三年生になりました。ミントンをいじめる子、仲良くする子もいろいろいるなかで、知也は国語が大変なミントンに「宿題を手伝います券」をあげようとしますが、ミントンのスピーチコンテストを聴いて、違う券にすることにしました。みなさんは、その券とは何だと思いますか?

「なんみんハウス」資料室には、このように全世代を対象としたフィクションもたくさん置いていきます。小説・絵本だからこそ、より心に訴えかけ、共感できる表現があるものです。

カテゴリー: 映画

映画『海は燃えている』

『海は燃えている』http://www.bitters.co.jp/umi/


この映画に関連して、資料室所蔵書籍の情報です。以下2冊の本は資料室にあります。※映画パンフレットもあります。


この映画の舞台になっているイタリアの島々の救助活動や援助政策打ち切り後の様子、リビアの難民待機所、密航業者の実態などは、パトリック・キングズレー(藤原朝子訳)『人類に突きつけられた21世紀最悪の難問 シリア難民』(ダイヤモンド社、2016年11月)に詳細なルポがあります。 また、もとから人口過密なマルタ島に流れ着いた難民の劣悪な収容の状況については、マッケンジー・ファンク(柴田浩之訳)『地球を「売り物」にする人たち 異常気象がもたらす不都合な「現実」』(ダイヤモンド社、2016年3月)に現地ルポがあります。


『海は燃えている』と同じ題材の映画(イタリアの漁民たちが難民を助ける)は、『海と大陸』があります。
 http://www.minpaku.ac.jp/museum/event/fs/movies1411

カテゴリー: 書籍

なんみんハウス資料室便り 2号

「なんみんハウス」資料室担当のnonomarun室長です@真冬の資料室は寒いよ(涙)
★資料室の書籍に押す蔵書印ができあがりました!青色のインクで、ぼちぼちと押していこうと思います。
★2号も蔵書紹介デス。nonomarun室長、原作を先に読もうと思っていたけど、やっと映画『帰ってきたヒトラー』を観ました。ドイツに押し寄せる難民について、ドイツ国民の危機感と自国の歴史からくる贖罪との葛藤が見えました。と同時に、こういう題材の本(映画)が生まれる国はすごいな、と素直に思います。この映画と今回紹介する本から引用したドイツ国民の声。いろいろな事を考える、寒い夜です。      

増田ユリヤ『揺れる移民大国フランス 難民政策と欧州の未来』ポプラ新書、2016年2月

第1章       フランス人、三代前はみな移民

第2章       フランスの移民政策

第3章       人生いろいろ、人種もいろいろ

第4章       押し寄せる難民に揺れるヨーロッパ

おわりに —- 裏切られても移民に手をさし伸べ続けるフランス

  シャルリー・エブド襲撃事件、パリ同時多発テロと2015年に立て続けにフランスを襲った衝撃。これで一気に難民・移民(特にムスリム)は排除される社会になるだろうと世界中が思ったのだが、欧州で難民・移民について取材をしてきた著者は「それはある意味正しいが、ある意味正しくない」という。フランス・ドイツ・ハンガリーを中心に、各国の難民政策や一般庶民・難民の声を丹念に拾い、それでも受け入れようと草の根で活動する人々の姿、難民・移民として懸命に生きる人々の姿を浮き彫りにする。今は撤去されてしまったフランス・カレーの難民キャンプの取材(帯の写真)は貴重。

 それにしても2016年2月の本書出版から2016年末までに、ここで書かれている状況が大きく変わっているのをみると、欧州が難民危機で激しく揺れ続けているのがわかります。特にクッときた箇所は、ドイツ・ミュンヘン駅で難民の列車を歓迎するドイツの人々(難民の子どもにはドイツの子どもがぬいぐるみを渡したり)。そこでドイツ人男性(73歳)が力強く言う言葉「われわれは1945年の出来事を決して忘れてはいない」。ナチスによるユダヤ六〇〇万人の虐殺について、自分たちが立ち会ったのでも手を下したのでもないが、それでも人は自国の歴史を背負って償っていく。その覚悟が国際社会では必要なのだ、と著者は彼の言葉から考える。そして帯裏にもあるフランス裁判官の言葉「不法移民の子どもを保護して、フランス社会で暮らしていけるように育てたとしても、同化できる子は六割、後足で砂をかける子が四割いる。しかし、たとえ四割の子に裏切られたとしても、それでも目の前にいる子を助ける。それがフランスという国だ」。私たちの国はどうだろう…?

カテゴリー: 書籍

なんみんハウス資料室便り 1号

「なんみんハウス」資料室担当のnonomarun室長です。   

第1号、まずは所蔵本のご紹介です。 

小林正典、ジュディス・クミン(溜池玲子訳)『みなおなじ地球の子 祖国は難民キャンプ』ポプラ社、1999年6月 序文:緒方貞子 ☆ふりがな付き

 「この子のかわりに写真で世界にこの悲劇を訴えたい、心からそう思う。」という小林氏の決意がこもった難民のこどもたちの写真は、時に残酷で,時に子どもらしい笑顔にホッとします。そして、こどもが同じ目線で難民のこどもたちに寄り添えるような文章がとても暖かいのです。クミン氏の「難民の明日 私たちが難民にできること」(106—107頁)の文章は、この日本で難民を支援するにあたって、暗記したいほどです。一部を紹介します。「難民に避難場所を提供できるのは、受け入れ側の政府だけです。そのほかの各国政府は受け入れ国や国際救援団体を支援するために経済的に活動をささえる必要があります。しかし、このことは、一般のひとびとが難民を助けるためにやることが何もないということではありません。私たちのだれもが、何かやれることがあります。難民を助けるということは、難民キャンプまではるばるでかけていって、キャンプで活動するとか、募金活動をしなければならない、衣類やおもちゃを難民に送る、そういった直接的なことをかならずしも意味するわけではありません。これらすべてをやることが可能だったとしてもです。それと同じくらいたいせつなのが、何が人を難民にしているかを理解すること、自分の国をはなれなければならなかった人に、顔立ちや服装がことなり、ちがうことばを話し、習慣もちがう人たちに、目を向けることです(後略)」

 →室長、これ、書き写しました、デス!

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カテゴリー: ごあいさつ

「なんみんハウス資料室だより」とは


「なんみんハウス資料室(まちライブラリー@RAFIQ)」に所蔵している本、新着本などを「なんみんハウス資料室便り」として、RAFIQ会員がボチボチと紹介していきます。

資料室には、難民認定に向けての実用書類、国際人権法、在住外国人支援のためのガイドブック類、日本語教材のほか、難民・移民・国際関係・国内事情などに関するノンフィクション・フィクション一般書・絵本などなど、あらゆる視点からの書籍や雑誌、報告書や論文類を所蔵しています。