カテゴリー: 書籍

なんみんハウス資料室便り 16号

小泉康一・川村千鶴子編著『多文化「共創」社会入門 ——移民・難民とともに暮らし、互いに学ぶ社会へ』慶應義塾大学出版会、2016年10月

み、みなさん、こ、こんにちは(おそるおそる)。なんみんハウス資料室長のnonomarun@15号っていつだったかしらって記録を遡ったら6月9日だったよ、みなさん私のこともうお忘れ(涙)? です。

資料室についにクーラーがつきます!たくさん書籍や資料も揃ってきたので、涼みに&勉強しにきてね!英語論文の寄贈もありました。

2ヶ月ぶりの本の紹介(ビクビク)は、「多文化共創」についてです。「共生(共に生きる)」ではなく「共に創る」。

「本書の目的は「対話的能動性」を相互に引き出しながら、移民や難民とともに生きる多文化社会の現実を知り、課題を発見し、問題解決の道を模索することにある。多文化共生からより広いネットワークをもつ能動的な実践力を発揮する「多文化共創社会」の実現を目指している。…日本政府は、これまで「移民」という言葉を避けてきたが、移民・難民はすでに私たちの眼の前にいる。ともに暮らしている友人でもある。…彼らは生活者であり、隣人であり、友人であり、時には身内でもある。」———まえがきより

そのために、具体的にどのような課題が目前にあるのか、これまでの経緯と現状を踏まえ、各章それぞれの論者が読者に問いかけ、各章に「ディスカッションタイム」として論点のポイントと視点の提示があります。ここからもわかるように、本書は特にこれからの若い世代に向けて、各研究者から期待を込めて発信されたもの。なぜなら「平成生まれの学生たちは、多文化・多言語にもまれて成長しており、多元価値社会に生きるアイデンティティの獲得に敏感である」から。

RAFIQでは「若手の会(仮称)」を2018年6月に立ち上げ、現在難民の方とともに、様々なイベントを行ってきました。nonomarun室長もその場に一緒にいて(注:私は若手ではありませんが、と毎回自己申告をし、そして難民の方々にも、いや君は若く見えるよ、とお気遣い票をいただくのがパターン化しています笑)、本書に書かれているような若い人たちの感性に触れる瞬間が多くあります。混迷していく日本社会・世界情勢のなかで、まず自分自身の将来や生き方、自己確立や自己実現をどうしていくかという希望と不安を持ちながら、どのように日本にいる難民と等身大で関わっていくのか、それは彼らの感性だけで乗り越えていけるものなのか、などなど、実はいろんなことを考えながら室長、楽しく関わっています。

会員向けイベントも開催予定なので、皆様もぜひ!と、最後は会の宣伝のようになってしまいました…が!                             

小泉康一・川村千鶴子編著『多文化「共創」社会入門 ——移民・難民とともに暮らし、互いに学ぶ社会へ』慶應義塾大学出版会、2016年10月

まえがき(川村千鶴子)

第1部               移民・難民理解へのアプローチ

第1章               学びの多様性と多文化共創能力 ——親密圏と多文化共創能力

第2章               多文化と医療 ——性と生殖を守るために

第3章               家族の変化を知る ——多文化な家族と地域社会

第4章               多文化共生の担い手を育てる ——群馬県大泉町での日本語教育の重要性

第2部               多文化共創まちづくりへの基礎知識

第5章               エスニック・コミュニティと行政の役割 –外国籍住民が「主体」になるために

第6章               企業が取り組む多文化共創 –CRSとダイバーシティ・マネジメント

第7章               日本の移民・難民政策

第8章               エスニシティの形成と創造 ——マジョリティ・マイノリティ関係の動態

第9章               外国人の市民権とは ——グローバル市民への視点

第3部               人の移動から世界を読み解く

第10章         現代世界の人の移動 –複合する危機と多様な人々

第11章         人はどう動いてきたのか –世界の変化と人の移動

第12章         世界は人々をどのように守ってきたのか ——ルール・組織と活動・恒久的解決

第13章         私はどこに属しているの? ——無国籍に対する国際的取り組み

第4部               21世紀をグローバルに考える

第14章         途上国では、いま何か起きているのか –ソマリアの事例から

第15章         難民流入に対するEUの移民・難民政策

第16章         国境を越える民、国歌を超える人権 –移民・難民の人権保護と国際人権法

第17章         難民の定住と心的トラウマの影響

第18章         移民・難民への見方を問い直す –“新しい人道主義”を超えて

あとがき

資料