カテゴリー: 書籍

なんみんハウス資料室便り 20号

ナディア・ムラド(吉井智津訳)『THE LAST GIRL イスラム国に囚われ、戦い続ける女性の物語』東洋館出版社、2018年11月

まちライブラリー@RAFIQの資料室室長nonomarunです@「資料室に本棚欲しい」ひとりキャンペーン中。


前回いつだったしらん、と探してみたら、2018年2月19日(19号)配信以来の…資料室便りでございマス。。。わー、ギリギリ一年超さなかったね!と自分を褒めてみました。時々ですが直にお会いした方に「室長便り、楽しみにしています!」って言われて有頂天になり、すぐ書くぞ!と拳を握った決意は雑事に紛れ。でも、春頃からRAFIQのHPは大大大リニューアルするので、がんばっていこうかと!


今回ご紹介するのは、2018年ノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさんの自伝です。


ナディア・ムラド(吉井智津訳)『THE LAST GIRL イスラム国に囚われ、戦い続ける女性の物語』東洋館出版社、2018年11月


内容はもうぜひ皆さんに本を読んでいただきたいし、平和賞受賞などであちこちでも記事で取り上げられていますので、そちらを。https://www.asahi.com/topics/word/ナディア・ムラド.html?iref=pc_extlink

前文に、ナディアを公私ともにサポートしている人権弁護士のアマル・クルーニー(俳優ジョージ・クルーニーのパートナー)が、素晴らしい寄稿文を載せています。アマルがナディアとともに出席した国連での感動的なスピーチも、ぜひ。https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/isis-102.php

彼女も「一人の人間として助けを求める声を無視することを恥ずかしく思う」と言っていますが、室長も、この本で一番印象に残っているのは、ナディアたちがトラックに詰め込まれて連れて行かれた街で、イラク市民が普通に、何事もなくショッピングをしたり日常生活をおくっている姿が、レイプなどの壮絶な体験以上に彼女の心を打ちのめしたことです。たくさんのヤズディ教徒の若い女性達に何が起こっているのか、彼らは知っているにもかかわらず、また性奴隷として売られた家の使用人や妻達が、同じ「女性」であるにもかかわらず、やさしいまなざし一つもみせずに、存在を無視されて続けていたこと(反対に彼女の脱出を、命をかけて助けた人びともいました)。彼らもIS支配下での恐怖があり、意志を示せなかったのかもしれないと想像しつつも、それが本当に彼女にとって辛いことであった。つまり、人びとの「完全なる無関心」が彼女の心をえぐり続けていた、という事実です。 それって、、、難民のみならず人権問題での「当事者」に対する、日本社会の無関心と同じ構図ではないかと、ナディアから問われている気がしました。


ナディア本人のドキュメンタリー映画が、2月から公開されます。『ナディアの誓い ーOn Her Shoulders』関西では京都と大阪で、3月から上映されます。東京ではトークショーもありますね。ぜひ、映画館にも足を運んでみてください。http://unitedpeople.jp/nadia/