生きる場所求めても 難民認定、厳しい日本

(17/2/12 中日新聞)

◆クルド人「米国と似ている」

トランプ米大統領が入国制限の大統領令を出し、欧州などでも流入する難民への風当たりが強まる中、生きる場所を求めて日本に来る人は後を絶たない。法務省入国管理局(入管)の十日の発表(速報値)によると、昨年の難民申請者は初めて一万人を超えたのに対し、認定者はわずか二十八人。二〇〇五年の来日以降、申請が認められずにいるトルコ出身のクルド人女性(28)=埼玉県川口市=は「日本のトップはトランプ大統領のように口には出さないが、難民への厳しさは米国と似ている」とやり切れなさを暮らす。

一月十九日、女性は都内の東京入管を訪れた。昨年十二月中旬、三度目の難民申請が認められず、入管に収容された夫(33)に面会するためだ。夫はストレスと質素な食事で四キロ痩せ、持病の腰痛が悪化している。「体が悪いのにいつ出してもらえるか分からず、つらい」。三十分間の面会を終えた女性は、申請の列をつくる他の難民たちを横目に入管を後にした。

クルド人は中東各国を中心に三千万人いると推計され「国を持たない最大の民族」とも言われる。長年差別や弾圧に苦しみ、女性もトルコではクルド人として名前を隠して生きてきた。

〇四年、兄がトルコ政府からテロリストの疑いをかけられ、一家は軍の監視下に置かれた。「トルコでは警察に逮捕されると拷問される。突然クルド人の消息が分からなくなることもある。命が危なかった」。トルコと友好関係にあり、査証なしで渡航できる日本に家族八人で逃れた。

だが、日本での難民認定の壁は厚かった。来日後はアルバイトで生計を立てていたが、在留資格が与えられず無職に。独学で日本語を習得し、クルド料理教室を開催するなど日本社会になじもうと努めてきたが、難民申請は一度も認められなかった。
「日本はトルコと仲が良いからこそ『トルコ政府に弾圧されたクルド人を難民認定する』とは言えない。どう考えても難民なのに、国同士の関係の裏で個人の人権が無視されている」と、女性と親しい難民支援団体「WELgee(ウエルジー)」の渡部清花(さやか)さん(25)=東京大大学院一年、富士市出身=は言う。

女性は現在、難民申請中でも入管の外で暮らせる「仮放免」の許可を二カ月ごとに更新しながら生活しているが、就労ができないため、飲食店を経営する親族の援助で生計を立てている。国民健康保険には加入できず、高額な医療費負担は重い。やむを得ず、通訳など日雇いのアルバイトをすることもある。

母国トルコの治安情勢は「イスラム国」(IS)などの問題で悪化の一途をたどっている。女性は「トルコにはとても戻れない。日本は第二の故郷だと思っているし、できるならずっと暮らしたい」と願い、難民認定を待ち望んでいる。
(松野穂波)