日本の入管収容所は、刑務所のようだと英国監督官は語った

(15/2/6 Japan Tims より

原文「Immigration detention centers like prisons, U.K. inspectors say」より

【写真説明】英国王立刑務所監督官、ヒンパル・シン・ブフイ氏(左)とコリン・キャロル氏は、東京で英国収容所の被収容者の環境改善の努力についてインタビューを受けた。(尾崎智洋撮影)

尾崎智洋記者・スタッフライター

1月、英国監獄監督専門官、ヒンパル・シン・ブフイ氏は初めて日本の入管収容所を訪問した。彼の最初に受けた最も大きな印象は、それが刑務所のようだったということだ。
「もし誰かが被収容者を面会に来たら、まずその人がアクリル板の向こうにいて、触る事もできないところから始まるだろう。そしてその事実は、非常に様々な制限を感じさせている。」と、ロンドンに本拠を置く英国王立刑務所監督官リーダーのブフイ氏はジャパン・タイムズに語った。
ブフイ氏は更に、茨城県の牛久入管収容所の訪問に関し「それは恐らく刑務所式のやり方で、入管収容所を訪れる人を驚かせるだろう」と語った。

1982年に設立された英国王立刑務所監督官制度は、国営の機関であることを証明するように、何人にも犯されない権威をもつ独立の監督官制度だ。そしてその対象は、刑務所から移民入管、軍の収容所まで多岐にわたる。

この英国の制度は、少ない予算で、政府からの独立性が殆どない日本の入管監督者と対照的な位置にあると日本の弁護士は語っている。
また、英国王立刑務所監督官の基本的哲学となっている、被収容者は「できるだけオープン」に過ごすべきだという考えは、近年2人の入管被収容者が、連続して死亡した件に対し、怠慢な対応を取っている日本に対する重要なメッセージともなっている。

ブフイ氏は、英国王立刑務所監督官は英国政府による手厚い予算の援助にも関わらず、監督は「独立、厳格性」を実行する自主性が認められていると語っている。
監督官たちは予告無しに調査対象の機関に立ち入り、敷地内のどこでも行くことが許され、そこで出会う誰とでも話すことができる。また監督官組織は、その結果を「自由に」公表ができ、視察後は違法行為を改めさせるために、収容所所長と政府機関の双方に勧告が可能となっている。

英国王立刑務所監督官コリン・キャロル氏は、何年にもわたる監督によって、英国の収容所で政策的に意味のある変化と「処遇と環境の全般的な改善」を導き出したと述べた。

英国の入管政策を担当する内務省は、過去と異なり、妊婦や子供を送還する際に、物理的な暴力の行使を一切許容していないとキャロル氏は語った。

また英国の被収容者は、収容所内のオープン・ラウンジで、訪問した家族と自由に会話し、抱擁し、またキスもできるとブフイ氏は述べている。彼らは携帯電話の使用が許され、弁護士と連絡を取るためにインターネットの使用ができ、母国の発展を遅れずに掴むこともできる。

更には、数人は映画を鑑賞し、芸術作品を作り、被収容者同士で音楽の練習さえ時に可能となっている。

「収容所の人々は、精神的、肉体的に挫折し、社会とも断絶しがちだ。彼らは家族からも離れ、支援からも離れている。そのため被収容者にとって、家族への電話をする機会は、大きな違いをもたらす。」とブフイ氏は指摘した。

「英国の収容所は、被収容者が外部の人々とコンタクトを取ることは、収容所内の安全面においてにと良い事であると理解を示している。何故ならそれが、被収容者の挫折感を減らしており、その結果彼らは収容所内で不正を行わなくなるからだ。」

ブフイ氏は収容所内の被収容者は、特定の攻撃的な罪を犯したこともなく、しばしば彼らは自身と家族のより良い生活のために入国しようとする、と続けた。彼はこの入国の動機を「賞賛すべき積極的感情」とも説明している。

「彼らは収容所では罰せられるために居るのではない。彼らはそこでは犯罪者ではないからだ。」と彼は語った。

しかし、この英国式の収容施設内でのオープンの概念は、日本の入管収容所には存在していないようだ。日本の入管収容施設では、被収容者は閉ざされたドアの向こうで起こっている非人道的な生活に抵抗するために、ハンガーストライキを頻繁に起こし、時に自殺未遂をも行っている。

特に適切な医療体制の欠如は、近年、国の医師不足と相まって被収容者の悲劇的な犠牲を引き起こした。

過去2年、品川区の東京入国管理局に収容されていた1人のスリランカ人とミャンマー(ビルマ)で迫害されている少数民族ロヒンギャの1人が、容体が悪化した際に、それぞれ入管スタッフの迅速な医療措置が取られなかったため、死亡した。2014年3月には、別の2人が牛久収容所で亡くなっている。

ブフイ氏は、これらの事件には直接言及しなかったが、こう付け加えた。「我々は、英国で収容中の死亡に関する体制を持っている。証人を呼ぶ事も可能であるし、検死官による陪審もある。また、オンブズマン(苦情調査官)は、いかなる死に対しても独自の捜査を行うだろう。」

ブフイ氏は、英国王立刑務所監督官は、オンブズマンの勧告を受けた施設が、勧告に従って予防的手段が実行されたかどうかを、収容所とともに引き続き調査すると指摘した。つまり、まずは問題を明らかにし、なぜ初めの場所で死亡事件が起きたのかを調査し、そして将来また同様の事件が起きるのを防止するする体制であると説明した。

「私は、日本にもこのような体制があって然るべきであると思う。」と語っている。

スリランカ人の死亡直後、東京弁護士会は、法務省の再三の失敗を非難し、被収容者の死因の確認を要求し、これらの事件を防止する第三者の監督体制を強く要求する声明を発表した。

日本の監督官である「入管収容所等視察委員会」は、第三者機関としての役割が求められているにも関わらず、法務省の管轄下にある。外国人の人権に精通した児玉晃一弁護士によると、委員会の入管視察のあらゆる点が、法務省により厳格に管理され、視察も法務省によって事前に知らされている。

児玉弁護士はまた、2010年に設置された日本初の視察委員会は、毎年、450万ポンド(約6億7500万円)という非常に大きい予算を組む英国王立刑務所監督官に比べ、日本の委員会は微々たる予算で運営している、と指摘した。法務省は自身のウェブサイトで、委員会メンバーは20名の大部分が弁護士、医療関係者、NGO活動家などから構成されていると発表しているが、詳細な身元に関しては公表されていない。

「限られた予算は、確かに障害だ。しかし現状を打破するには、日本の監督官たちが、組織を改善する努力をし、関連して世論の支持を得る必要がある」と宮内博史弁護士は語った。

「より多くの予算とスタッフの充実のために、委員会のメンバーは、世論にこの視察委員会の重要さを納得させるために、一層の努力をする必要がある。」と宮内弁護士は続けている。

「そのためには、委員会が調査結果を自由に述べることができ、彼ら主導で市民にアピールを行うことのできるシステムが、政府主導のフレームワークの外側に必要なのである。」

(翻訳:RAFIQ)


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