(15/1/23 毎日新聞)
2015年01月23日 02時33分
地域紛争や内戦の激化に伴い避難生活を余儀なくされている避難民が世界各地で増えている。2013年時点で、第二次世界大戦後最も多い5100万人と推定される。
そうした現状下、13年に世界各国で難民と認定された人は21万人以上いるが、日本の同年の難民認定者は6人だ。人道的理由で在留を認めた人を含めても157人にとどまる。
かつて「難民鎖国」と言われた実態は、受け入れ人数から見る限り今も変わっていな
い。
こうした中、専門家による法相の私的懇談会が先月、難民政策の見直し案をまとめた。迫害の方法などが多様化しているのに対応した保護の仕組みを創設することなどを提言した。先進国として責任ある難民の受け入れは当然だ。政府は一層の制度改善に取り組むべきだ。
日本は1981年に難民条約に加入し、翌年、難民認定制度を始めた。13年までの累計認定者数は622人だ。申請は近年急増し、13年はアジアを中心に3260人に上った。
経済的な豊かさを求め、国境を越えて移動する時代背景もあるのだろう。「迫害を受けるおそれ」という難民の定義からかけ離れた就労目的などの申請も相当数あるとされる。
一方で、従来の難民の定義では保護し切れない人たちが増えている。アフリカの一部地域に残る女性器切除などの新たな類型の迫害について、既に保護対象にしている国がある。提言は、こうした国際環境の変化への積極対応を促したもので、人権保護の立場から当然の考え方だ。
ただし、懇談会の報告は、難民受け入れ総数の少なさには踏み込まなかった。欧米諸国などは、難民条約に基づいて年間数千、あるいは万単位の難民を受け入れている。認定は「本人や出身国の個別事情」とする法務省の説明は説得力に欠ける。
日本は国連難民高等弁務官事務所に世界2位の拠出を行っており、間接的な人道支援への貢献は大きい。だが、実際に難民を受け入れなければ、「難民に冷たい日本」との国際社会の評価は変わらないだろう。
イスラム国の台頭で、シリアやイラクでは国内外に数百万人の避難民が生まれている。そうした現実を見据えれば、アジアの一員として一歩も二歩も踏み出すときではないか。
難民認定が国際的な基準に比べ厳しすぎるとの支援団体などの批判を政府はしっかり受け止め、受け入れ拡大策を真剣に検討すべきだ。難民が日本社会に定着できるような社会的基盤づくりも必要である。
衆参両院は、難民条約加入30年の11年、難民問題で日本が「世界で主導的な役割を担う」との決議を採択した。国会も責任を果たすべきだ。