難民認定審査、迅速化を検討 申請数急増、昨年初の3000人超え

(2014/3/21 朝日新聞)

2014年3月21日05時00分

難民認定を求める外国人が昨年初めて、年間3千人を突破した。急増で審査が長引いているとして、法務省は近く、却下する際の審査の短縮や省略などスピードアップ策の検討に入る。一方、国際的にみても日本の審査は厳しく、昨年、難民と認められたのは6人だけ。「認定のハードルを下げる議論も同時にすべきだ」との批判が出ている。

法務省によると、2003年に336人だった申請数が13年には過去最高の3260人に。10年で10倍近くになった。
国籍上位3カ国はトルコ(658人)、ネパール(544人)、ミャンマー(380人)だ。

難民認定の1次審査は法務省が担う。退けられた人が異議を申し立てると、弁護士や学者ら民間人の「参与員」が3人1組で審査し、法相に対応を進言する。参与員は現在74人。増員しても追いつかず、申請から結論まで平均で約3年かかっている。

申請は何度でも繰り返せるうえ、申請中は強制送還の対象にならない。法務省は、こうした制度が海外に知られ、申請数の急増につながっているとみる。

難民認定は「人種や宗教、政治的な考えなどを理由に母国で迫害を受ける恐れがある」のが前提だが、近年は、日本で働いて母国に送金するために申請を繰り返していると疑われる例が多く、同省幹部は「本当に保護すべき人の審査が遅れている」と主張する。

大学教授や弁護士らで構成される法務省の有識者会議は、年内に対策を打ち出す予定だ。フランスやドイツ、韓国などでは、1度目の申請と同じ理由や、明らかに難民にあたらない理由での申請は審査を省略したり、審査前に却下したりしているといい、こうした例を参考にする方針。早ければ来年の通常国会に、出入国管理及び難民認定法の改正案を提出する方向だ。

難民問題に詳しい識者はどうみるか。児玉晃一弁護士(東京弁護士会)は「現在の審査制度は人手不足で限界。法務省から独立した審査機関が必要だ」とし、「厳しすぎる認定基準の緩和も迅速化とセットで議論すべきだ」と主張する。

日本で難民認定されるのは多くて年間数十人。12年は18人、13年は6人で、2万5千人以上の米国や、欧州の先進国と比べると際だって少ない。日本の閉鎖性を表しているとして、専門家の間では審査基準の見直しを求める声が根強い。

外国人政策に詳しい田中宏・一橋大名誉教授は「そもそも日本の場合、欧米と比べて申請者の数自体、決して多いわけではない」と指摘。「難民認定の運用にくわしい国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の担当者を審査のプロセスに参加させれば、諸外国の認定基準に近づけることができるのでは」と提案する。(西山貴章)

◆キーワード
<難民認定制度> 日本は1981年に国連難民条約に加入し、82年から認定制度が始まった。難民と認められると日本での就労、生活保護の受給、母国から家族を呼び寄せることが可能になる。当初、認定審査は法務省だけが担っていたが、2002年に北朝鮮を脱出した亡命希望者が中国・瀋陽の日本総領事館に駆け込んだ事件を機に、民間の「参与員」が審査を行う制度が05年に始まった。

■2012年の主な国の難民認定数
米国      25000
ドイツ      8800
英国       8700
オーストラリア  8400
フランス     7400
韓国        60
日本        18
(UNHCR調べ。単位は人)