難民認定 問われる覚悟

(13/6/20 日本経済新聞)(広角鋭角:「新時代の入国管理(9)」から)

RAFIQよりはじめに

この記事は、2013年6月に9回連載されたうちから最後のコラムです。
1~6回までは2012年から施行された「新しい在留管理制度」の実態やシステム紹介的なコラムです。7回目は、長年日本で暮らすオーバーステイの方たちに焦点が当てられました。8回目は入管の収容施設についてですが、入管のほぼ言葉通りの記事になっています(多分取材も面会も出来ず収容の実態がつかめていないからだと思えます)。
最後にようやく難民問題に触れ、当事者や支援団体、研究者にも取材していますが、最後の法務省の言葉で締めくくられています。
入管業務を紹介したような記事が多い中で、難民問題にも目を向けられたことを高く評価したいと思います。

しかし、「難民を受け入れる前提と覚悟」を問われるのは、難民条約に加入している国のほうです。難民認定審査をしている国のほうです。「難民も外国人も受け入れない」とキャンペーンを貼るような形で市民社会に注意を促してきた経過があり、受け入れない市民社会を作ってきたのは、国のほうです。

なぜ難民認定でなくて「人道的配慮による在留許可」を出さねばならないのか、難民参与員制度があるのに、認定率が低いのはなぜなのか、など、新聞社としての疑問を持ち、取材をしていただきたいものです。


 

東京都新宿区のNPO法人「難民支援協会」には、難民としての保護を求めて来日した外国人のバッグが山積みになっている。
今年初めに入国した西アフリカ地域の男性(35)は頼るつてがなかった。難民申請の手続きも分からないまま閉店後のアフリカ料理店などで夜露をしのぎ、ようやく協会にたどり着いた。「空港ではホッとしたが、今はとても不安」
協会は男性のようなホームレス状態の難民申請者にサバイバル情報を記した冊子を渡す。広報部の田中志穂チーフリーダーは「申請の結果が出るまで数年かかる。その間の生活保障が十分でないのが日本の難民受け入れの現状」と話す。

日本が難民条約に加入し、入国管理局で難民審査を始めたのは1982年。2008年に1000人を超えた申請者は最近、トルコやアフリカ諸国と国籍も広がり、昨年は2500人を数えた。が、認定された外国人は昨年、わずか18人(異意申し立てでの認定者を含む)。条約とは別に1万人以上を受け入れたインドシナ難民を除き、認定数や率の低さが欧米諸国との比較で問題視されてきた。
全国難民弁護団連絡会議は「日本の認定実績はミャンマー人に集中している。軍事政権に迫害される知識層という典型的な難民像から抜けきれず、世界の潮流から取り残されている」(事務局)とみる。
例えば国籍国での「迫害のおそれ」の認定。欧米などでは迫害の主体を国家に限定しない考え方も広がりつつあるという。阿部浩己・神奈川大教授は「世界のどこでも保護されるのが難民条約の趣旨。公正な判断には本来、独立した専門機関に認定を委ねるのが望ましい」と指摘する。

これに対し法務者は「条約により国が義務を負う以上、厳格、適正に認定するのは当然。気の毒な事情はあるが、条約上の難民には到底該当しない主張の申請者が多い」(難民認定室)と説明する。ただ過去5年で1600人弱に人道配慮での在留許可を出してきたほか、認定手続きでも外部識者の意見を聞く参与員制度を設けるなど、中立公平性の確保に配慮している。

難民認定の多い国々は移民受け入れの実績がある。多文化共生社会への道を歩み出した日本社会に難民を受け入れる前提と覚悟がどれだけ備わっているのか。認定率の低さはその表れともいえる。

【写真】ホームレス状態のアフリカからの難民申請者(東京都新宿区の難民支援協会)