(12/7/8 沖縄タイムス)
9日から始まる外国人の新しい在留管理制度に、県内で暮らす外国籍の人々から疑問の声が上がっている。引っ越し時に「転出届」を怠ると在留資格が取り消される場合があるなど規制が厳格化されたからだ。背景には不法滞在者の排除があるが、外国人の生存権に関わると批判も上がっている。新制度導入直前まで詳細を知らない人も多く、制度に関わる入国管理局や市町村の周知不足を指摘する声もある。(黒島美奈子)
新制度は外国人登録制度を廃止。これまでは不法滞在者にも交付されていた証明書を無くし、正規滞在の外国人に限り住民基本台帳に載せて管理する仕組み。県内で対象となる外国人は2011年10月1日現在、約60カ国7815人。滞在する外国人にとって重要な制度改正となる。
だが、16年前来県したブラジル県系人で同国籍の平良ソニアさん(48)は今年6月末、知人から聞くまで制度改正を知らなかった。
新たに住民基本台帳へ記載される個人情報の確認が5月、那覇市から郵送されたが「これまでの制度がどのように変わるのか情報は記載されず、新たな手続きが必要なのかどうかも分からない」と不安げに語る。
在日本大韓民国民団沖縄地方本部の金美敬(キムミギョン)事務局長も「情報があまりにも少ない」と不満顔だ。市町村から個人情報確認が届き始めた5月に入り、同本部には問い合わせが増えた。
例えば中長期滞在の外国人へ新たに発行される在留カードは、現行の証明書にある日本での通称名が併記されない。通称名で預金口座を持つ外国人も多く、金さんは「外国人の暮らしに直結する制度改正であり、せめて住民説明会が必要」と訴える。
米国人の男性(50)は「まるで外国人を犯罪者のように扱う制度改正だ」と疑問視する。今改正で外国人が働く企業や就学する学校は、法務省への届け出が必要になった。
男性は「不法滞在者を減らすというが、さまざまな理由で仕方なく不法滞在している外国人が行く当てもなく地域から締め出されるやり方で、国際法上も疑問」と指摘。「学校や職場など社会のあらゆる機関を使って、合法的に暮らす外国人までも監視し、暮らしにくくする制度だ」と批判した。
法務省福岡入国管理局那覇支局は「制度改正は合法的に暮らす外国人の利便性を高める側面もある。合法的に滞在する外国人であれば定期的に行政窓口につながるはずで、制度改正は徐々に周知できる」と説明している。