(12/7/8 中日新聞)
登録し在留カードを交付する新制度が九日から始まる。これまでは不法滞在者であっても市区町村で外国人登録証明書(外登証)が交付されていた。法務省入国管理局は管理を強化することで、在留期間が過ぎても日本に滞在するオーバーステイの外国人を減らしたい考え。
入管は「合法的な滞在者には利便性が上がる」と説明。新制度では、在留期間の上限が三年から五年に延長され、出国してから一年以内に再入国する場合は許可が不要となる。
また市区町村と入管を専用回線で結び、入管は外国人の転居情報を一元管理。九十日以内に転居を届けなかった場合などに在留資格を取り消すことができる規定を新設した。
これまで市区町村は外国人登録を基に、医療や教育などの行政支援をしていた。これまでは不法滞在者でも、人道的な観点から最低限の行政サービスを受けられていたが、今後の対応は自治体に委ねられるため、均一的な支援が行われるかどうかは不透明だ。
法務省によると、二〇一一年末時点の外国人登録者は約二百七万九千人。不法滞在者は八万~九万人とみられる。
◆浜松市 行政サービスの差懸念
新制度については、不法(非正規)滞在者への行政サービスをめぐり、「自治体で対応が分かれて混乱するのでは」との懸念が出ている。外国人が多く暮らす浜松市は、全国約三十の自治体でつくる「外国人集住都市会議」に呼び掛け、対応の目安となる統一見解を出すことなどを検討している。
「テレビの地デジ切り替えと同じくらい、宣伝してくれれば」
ブラジル人を筆頭に約二万五千人の外国人登録がある浜松市の担当者はため息をつく。基本的な行政サービスは、国の方針で正規・非正規にかかわらず受けられることになっている。しかし一部自治体では十分に伝わっておらず、非正規滞在者へのサービスを行わないところが出る恐れもあるという。
「うちはやるべきことはやる。ほかが受け入れない場合に、流れてくるかもしれない」と、市国際課の担当者は懸念する。
今年三月、市民団体がまとめた全国百自治体へのアンケートで、一部自治体が「新制度以降は、母子手帳交付や義務教育の就学受け入れなどをしない」と回答した。