カテゴリー: 書籍

なんみんハウス資料室便り 2号

「なんみんハウス」資料室担当のnonomarun室長です@真冬の資料室は寒いよ(涙)
★資料室の書籍に押す蔵書印ができあがりました!青色のインクで、ぼちぼちと押していこうと思います。
★2号も蔵書紹介デス。nonomarun室長、原作を先に読もうと思っていたけど、やっと映画『帰ってきたヒトラー』を観ました。ドイツに押し寄せる難民について、ドイツ国民の危機感と自国の歴史からくる贖罪との葛藤が見えました。と同時に、こういう題材の本(映画)が生まれる国はすごいな、と素直に思います。この映画と今回紹介する本から引用したドイツ国民の声。いろいろな事を考える、寒い夜です。      

増田ユリヤ『揺れる移民大国フランス 難民政策と欧州の未来』ポプラ新書、2016年2月

第1章       フランス人、三代前はみな移民

第2章       フランスの移民政策

第3章       人生いろいろ、人種もいろいろ

第4章       押し寄せる難民に揺れるヨーロッパ

おわりに —- 裏切られても移民に手をさし伸べ続けるフランス

  シャルリー・エブド襲撃事件、パリ同時多発テロと2015年に立て続けにフランスを襲った衝撃。これで一気に難民・移民(特にムスリム)は排除される社会になるだろうと世界中が思ったのだが、欧州で難民・移民について取材をしてきた著者は「それはある意味正しいが、ある意味正しくない」という。フランス・ドイツ・ハンガリーを中心に、各国の難民政策や一般庶民・難民の声を丹念に拾い、それでも受け入れようと草の根で活動する人々の姿、難民・移民として懸命に生きる人々の姿を浮き彫りにする。今は撤去されてしまったフランス・カレーの難民キャンプの取材(帯の写真)は貴重。

 それにしても2016年2月の本書出版から2016年末までに、ここで書かれている状況が大きく変わっているのをみると、欧州が難民危機で激しく揺れ続けているのがわかります。特にクッときた箇所は、ドイツ・ミュンヘン駅で難民の列車を歓迎するドイツの人々(難民の子どもにはドイツの子どもがぬいぐるみを渡したり)。そこでドイツ人男性(73歳)が力強く言う言葉「われわれは1945年の出来事を決して忘れてはいない」。ナチスによるユダヤ六〇〇万人の虐殺について、自分たちが立ち会ったのでも手を下したのでもないが、それでも人は自国の歴史を背負って償っていく。その覚悟が国際社会では必要なのだ、と著者は彼の言葉から考える。そして帯裏にもあるフランス裁判官の言葉「不法移民の子どもを保護して、フランス社会で暮らしていけるように育てたとしても、同化できる子は六割、後足で砂をかける子が四割いる。しかし、たとえ四割の子に裏切られたとしても、それでも目の前にいる子を助ける。それがフランスという国だ」。私たちの国はどうだろう…?