東日本入管センター 仮放免の保証金、ハンストで「減額」?

(10/10/4 毎日新聞)

不法滞在などの外国人を収容する東日本入国管理センター(茨城県牛久市)で5月、待遇改善を求める収容者約70人が約2週間ハンストした。ほとんどが難民認定や在留特別許可の申請者。収容期間の長期化や、一時的にセンター外へ出られる仮放免に必要な保証金が高いことへの抗議だという。こうした事態を受け入管と日本弁護士連合会は9月9日、センターへの外国人収容を巡る問題について、協議の場を持つことで合意した。センターで何が起きているのか。【高橋慶浩】

「収容やめろ!」。9月8日午後3時、東京都港区の東京入国管理局庁舎前。激しい雨が降る中、難民認定を申請する外国人ら約90人がデモ行進し、長期収容を続ける同局に抗議した。庁舎8~11階には収容施設があり、デモ隊が拡声機で訴えると、収容者からとみられる口笛や歓声がもれた。

デモには5月のハンストのリーダー格のクルド人男性A氏(30)とスリランカ人男性B氏(37)も参加していた。2人は難民申請中で、ハンスト後の6月と9月に仮放免された。B氏はハンスト後のセンターの姿勢を「少し変わった」と評価しながらも「センター長が代われば元に戻る可能性がある」と不安を口にした。

収容経験者によると、センターの居室は5人部屋と10人部屋の2種類で、1人分のスペースは1畳程度。建物内は1日5時間半、自由に移動できるが、午後4時半には部屋に戻される。
仮放免の可否や保証金の金額はセンターの所長が決める。金額は上限300万円と定められている以外に明確な基準はない。リーダーらは、半年以上の長期収容をやめさせ、100万円を超えることもある保証金を20万円に下げさせようと、4月中旬ごろからハンストを計画した。5月9日にセンター職員とリーダー数人が話し合ったが、職員から「何をやっても入管は変わらない」などと言われ、翌日からハンストを決行した。だがハンストが報道されると、1週間後にはセンター職員から「望んだことはやるのでやめてほしい」と説得されたという。

ハンストの間、センターには、「牛久入管収容所問題を考える会」(同県つくば市)などの支援団体も訪れた。同会によると、5月19日にセンター側が「長期収容は好ましくない」との見解を示したため、同会はハンストをやめるよう説得。リーダーは受け入れ、13日目にハンストをやめた。
A氏とB氏の保証金は30万円。バングラデシュ人男性(31)はハンスト後「今、申請すれば認められやすい」と職員から助言を受けたため仮放免申請を出したところ、保証金は10万円ですんだという。

センター総務課は「収容期間が1年間を超えると体調面からもいろいろ支障をきたす可能性は高いという認識はある」としながらも、現在いる収容者の収容期間の内訳は明らかにしていない。また、ハンストについては「要求を通すための正当な手段でない」とし、リーダーらと交渉したことや、要求を受け入れたことはないと強調。保証金の「減額」とハンストとの関連は「たまたま重なっただけ」としている。

■送還の外国人収容 国内に3カ所

入国管理センターは、入管法に基づき退去強制令書が発付された外国人が送還されるまで収容される施設。国内には東日本入国管理センターほか、大阪府茨木市と長崎県大村市の計3カ所にある。
東日本センターの定員は700人。ハンスト直前の5月7日現在で394人が収容されていた。当時の収容期間の内訳は、2年以上4人▽1年以上2年未満46人▽1年未満344人。9月末には約270人に減った。
入管法は収容期間を定めていないため、国連の拷問禁止委員会は07年5月、上限を明記するよう勧告した。また日弁連は10年3月、法務省の出入国管理基本計画案に対し意見書を提出。その中で「難民認定申請中の者の法的地位の安定が、その生活の保障と並ぶ喫緊の課題」とし、審査中の難民申請者は収容しないよう求めた。入管も7月に「収容長期化をできるだけ回避するよう取り組む」との方針を出している。

毎日新聞 2010年10月4日 東京朝刊


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