(10/5/31 東京新聞)
強制送還前の外国人を収容する法務省の東京入国管理局(東京都港区)の施設と、「東日本入国管理センター」(茨城県牛久市)でこの春、相次いで結核患者が発生していたことが三十日、分かった。施設の医療や環境対策に問題はなかったのか。 (篠ケ瀬祐司)
東京入管の施設では今月、ミャンマー人男性が結核と診断された。東日本センターでは「個人が特定される話はできない」(同センター総務課)と、患者発生のみ認めているが、収容者を支援する複数の団体によると、今年三月に台湾人男性が結核と診断された。
他の収容者へ感染する恐れがあるため、二人は収容施設とは別の場所へ緊急入院している。
両施設では患者と同室だった収容者が「接触感染」している可能性があるとみて、感染予防薬を投与しながら経過を観察しているという。
さらに保健所の指導で収容者全員のエックス線撮影を実施。東日本センターでは先月から、新たな収容者へのエックス線撮影もしている。現時点では、収容者計約千人や職員への二次感染は確認されていないという。
東日本センターでの結核患者発生は二〇〇一年以来。東京入管では「過去にも例はあった」(同総務課)とするが、発症例の詳細については不明だという。
ただ、大村入国管理センター(長崎県大村市)でも〇七、〇八両年に一人ずつ患者が発生している。東京入管では「今回はたまたま時期が重なっただけ」としているが、医師や支援者たちは同センターの診断態勢強化など、待遇改善の必要性を指摘している。
その一人で、結核が専門で、収容者との面接を続けている横浜市内の医師、山村淳平さんによると、アジア系、アフリカ系外国人は日本人に比べて結核の感染率が高いと語る。「肺の中に結核菌を持ったまま入国する人が、その後の厳しい労働などで抵抗力が落ち、発症しやすい」 施設に長期収容されると、さらに発症の可能性が高まる。十畳程度の部屋で七、八人が同居し、多くの時間を部屋で過ごすため、収容者はストレスを感じやすい。言葉が通じにくいことや、外部と連絡がとりにくいことなど、マイナス要因が重なると、食欲減退などで抵抗力低下につながることがあるという。
山村さんはこうした収容環境の改善のほか、施設内の二次感染や感染した収容者が仮放免などで社会に戻り、感染を広げることを防止するため、「施設でのエックス線撮影や定期検査を確実に実施すべきだ」と話す。
アムネスティ・インターナショナル日本(東京都千代田区)も医療態勢改善が急務だとする。
収容者との面接の結果「結核感染のおそれがある収容者に正確に情報が伝わっていないケースがある」と指摘。結核と並んで外国人の感染者が多い肝炎についても、定期的な検査を行うことや常勤医師が専門の内科以外の場合、外部診療を増やすべきだと提言する。
アムネスティは三十一日、日本外国特派員協会で記者会見し、東日本センターで今月十日から二十五日まで行われたハンガーストライキの状況を報告、併せて収容施設での処遇改善を訴える。
【写真】結核患者が発生したことが分かった東京入国管理局。他施設でも発生が確認された=東京都港区で