(10/5/19 東京新聞)
仮放免あいまい規定 平均で約1年 長期収容、拘禁症状も
日から数十人の入所者が仮放免などを訴え、ハンガーストライキ(ハンスト)を続けている。今年三月にも大坂府内の収容施設で集団ハンストが起きた。何が収容者たちの「抵抗」を招いているのか。
(篠ケ瀬祐司)
東日本入国管理センターは、入管難民法などに違反し、強制退去処分を受けた外国人が退去までの一時期、収容される国の施設。定員は七百人で、現在三百八十人前後が収容されている。
同センターの収容者と面会を続けている市民団体「牛久入管収容所問題を考える会」の田中喜美子代表によると、トルコ国籍のクルド人やスリランカ人ら、アジア系の約七十人が十日からハンストを開始。一週間以上たった十八日も、約五十人が続行している。
同センター側は「給食をとらない人は三十人程度」(総務課)と説明。数が食い違うが、三十人でもかなりの人数だ。
十七日に収容者と面会した別の支援団体「SYI」の関係者によると、「ハンスト参加者は給食を口にせず、水やスポーツ飲料、塩、砂糖、差し入れのビスケット程度をとるだけで、要求が受け入れられるまで頑張ると話していた」という。
ハンストの要求に掲げられている主な項目は(1)半年以上の長期収容の中止(2)未成年者の収容をやめる(3)仮放免の保証金上限を二十万円に下げる(4)強制送還をめぐって裁判中の者を再収容しない―の四点だ。
支援者らによると、施設は名目上「一時収容場所」だが、実際には一年以上、長い人は二年以上収容される二ともあるという。収容者との面接を続けている横浜市内の医師、山村淳平さんによると、最近、面会した人の平均収容期間は約一年。最も長い人では三年弱という例もあるという。
なぜこうしたことが起こるのか。
関係者らによると、法務省が出身国などへの強制送還の「令書」を発付しても、取り消しを求めて裁判を起こしたり、難民認定申請をしている間は強制送還されない。一方、現行の収容制度は「すみやかな送還」を前提としており、こうした収容者の法的な権利主張への対応はいわば「想定外」。このため、長期収容を招いているという。
人権問題に詳しい大阪弁護士会の丹羽雅雄副会長は「収容者はいつまで収容されるか分からない状態に置かれ、先行きへの不安を募らせる」と指摘。山村医師も「長期収容者には不眠、頭痛、食欲不振などの拘禁症状がみられる」と長期にわたる収容の弊害を説く。
現行制婆でも、強制送還までの間に収容施設から「仮放免」されるケースもある。しかし、丹羽弁護士は「どういう場合に仮放免されるか、規定があいまいで、行政側の裁量権が大きすぎる」と、制度的な問題点の解消が不可欠だと話す。
人権侵害監視第三者機関を
山村医師も「出入国管理の中で人権侵害を起こしてはならない」と、第三者機関によるチェックなど制度改革の必要性を強調。アムネスティ・インターナショナル日本の寺中誠事務局長は「難民認定の裁判は時間がかかる。この間は収容すべきではない」と訴える。
現在も続くハンストについては、十九日に『考える会」と同センターの間で、対応策が話し合われる予定だという。
【写真】数十人の収容者がハンガーストライキを続けている東日本入国管理センター=茨城県牛久市で