(17/4/10 日本経済新聞)
「迫害つらい立場知って」
日本で難民申請した外国人を支援しようと、民間団体が昨年、認定を待つ間に無償で寝泊まりできる施設を大阪市内に開設した。日本語教材などを備え自立した生活ができるようサポートする。日本では難民の申請者が2016年に初めて1万人を超えた。団体のメンバーは「迫害から逃れてきた人たちに関心を寄せてほしい」と話す。
「自由になり、とても安心した」。市営地下鉄東三国駅(大阪市淀川区)近くの「OSAKAなんみんハウス」で、中東出身の20代男性が顔をほころばせた。母国で宗教上の迫害を受ける恐れがあることから15年夏、「安全な国だと思った」(男性)日本に逃れてきたという。
日本語教材置く
同ハウスは昨年10月、大阪市の民間団体「在日難民との共生ネットワーク」(RAFIQ)が開設した。同団体は入管施設に収容された難民申請者に面会し、要望を聞くなど支援を続けてきた。欧州で問題となった難民のニュースに心を痛めた府内の女性から無償で住宅を借り、メンバーが手作業で築約50年の2階建て木造住宅を改装した。
1階は事務所、2階は難民申請者が寝泊まりできる「シェルター」と日本語教材や外国語の本を備えた資料室。資料室も活用すると最大4人を受け入れられる。
中東出身の男性は日本入国後、パスポートに問題があるとして不法入国の疑いで大阪入国管理局と大村入国管理センター(長崎県大村市)に計約1年9カ月収容されていた。同団体が面会を重ね、収容を一時的に停止する仮放免許可を申請。4度目にようやく認められ、今年1月に同ハウスに移った。
自立への準備に
男性は収容中に日本語を学び、同ハウスに来てからはスーパーで買い物をして自炊。1人で暮らせる自信がつき、3月にアパートに移った。「日本は思っていたより難民認定されにくい。こうしたシェルターがあるのはありがたい」と感謝する。
法務省が3月に発表した16年の難民認定申請者数(確定値)は前年比44%増の1万901人。一方で認定されたのは28人にとどまる。
同団体の田中恵子共同代表(62)は「難民を申請する人はつらい思いをして母国から離れてきた。そうした立場を理解し、支援する人が一人でも増えてほしい」と話している。
【写真】民家に設けられた難民申請者などが使うシェルター(3月、大阪市淀川区)