ハンガリー国境、難民拘束に賠償命令 欧州人権裁判所

(17/3/16 朝日新聞)

パリ=喜田尚 2017年3月16日 01時24分

2016年9月、ハンガリー南部のセルビアとの国境地帯にある「トランジット・ゾーン」でパトロールするハンガリーの軍人と警官ら=AP

欧州人権裁判所(フランス・ストラスブール)は14日、2015年の難民危機でハンガリーが難民認定を望む人を国境付近で拘束したのは欧州人権条約違反だったとして、同国政府にバングラデシュ人原告2人にそれぞれ1万ユーロ(122万円)を支払うよう命じた。

ハンガリーは同年9月に南部のセルビアとの国境をフェンスで遮断。それ以来、難民申請を望む人々を最長28日間、国境沿いの金網に囲まれた幅十数メートルの通称「トランジット・ゾーン」(TZ)で拘束してきた。今月7日には、この拘束を難民申請に対する審査結果が出るまで継続できる法案を議会が可決し、強硬姿勢をさらに強めている。

原告2人はTZ設置直後の15年9月に23日間拘束された上、隣国セルビアに戻された。
判決はこの2人の訴えに対するものだが、同じTZで今も多くの人が同様に拘束されており、国際機関、人権団体などが同国政府への批判を強めるのは必至だ。

ハンガリーはこれまでおおむね家族連れの難民申請者に対する長期拘束は避けていたが、7日可決された法案は子供の長期拘束も認めている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は「国際法とEU法に違反だ。すでに大きな苦しみを背負った人々に恐ろしい打撃を与える」(セシル・プイー報道官)としている。ユニセフ(国連児童基金)はアーデル大統領に法案への署名を思いとどまるよう求めている。(パリ=喜田尚)