(17/3/8 中日新聞)
画像:「ビザが延びる」とだまされ、除染現場で働いたことを証言したホセイン・モニーさんの難民認定申請書類と除染作業講習の修了証=一部画像処理
画像:難民申請者が除染に送り込まれた流れ
東京電力福島第一原発事故の除染作業で、日本に難民申請中のバングラデシュ人の男性二人が、業者から「除染に従事すればピザが延長される」と虚偽の説明を受け、福島県内で働かされていたことが分かった。法務省入国管理局難民認定室は「極めて重い問題。事実が把握できれば業者を指導する」とし、近く調査に乗り出す。
日本政府は難民認定審査を待つ申請者に対し、上限半年間のピザを発給、期限ごとに更新の可否を決める。二〇一〇年以降、申請から半年以上が経過した人の就労を一律に認めたが、あくまでも生活の安定を図るための人道的措置。今回の事案は制度を悪用した行為で、難民認定室は「誤った説明で人集めをしているとすれば悪質で見逃せない事案。申請者本人からも聞き取りしたい」としている。
本紙に証言したのは、バングラデシュ人のホセイン・モニーさん(50)とホセイン・デロアルさん(42)。ともに母国の野党バングラデシュ民族主義党の有力な支援者で「政府の迫害」を理由に一三年、それぞれ日本に難民申請した。
二人によると一四年末、日本に住むバングラデシュ人の男性に人材派遣会社を名乗る人物を紹介され「除染は人が足りず、ピザが延長される」と説明を受けた。さらにこの人物を通じて名古屋市の建設会社に採用され、一五年一~三月ごろまで、福島県飯舘村で除染作業に従事。建設会社側も「除染は国の仕事だからピザが延長される」と話したという。二人は「日本人が嫌がる仕事と聞いて、ピザの話を信じた」と訴える。
二人を雇った名古屋市の建設会社はその後、社名変更し、当時、福島市にあった営業所は引き払われていた。名古屋市内の所在地はピルの一室で、郵便ポストには同社を含む複数の社名が記載されていた。電話には応答せず、ファクスでの取材申し込みにも七日までに回答はなかった。
二人が除染作業に従事したのと同時期、バングラデシュ人の難民申請者モラ・モハメッドさん(47)も、別の建設会社から「除染は国の仕事。一年以上のピザがもらえる」と持ち掛けられたと明かす。また、愛知県内で解体業を営むトルコ人の男性は「関西の建設会社に『除染の人手が足りない。何人でも構わないので外国人を送ってくれ』と頼まれたことがある」と証言。当時、除染作業は人手不足が深刻で、ピザ延長をうたった難民申請者の勧誘が横行していた可能性もある。
<難民認定制度> 人種や宗教、政治的意見などの理由で迫害されている外国人らを保護する制度。法務省入国管理局が認定の可否を審査する。一度却下されても、繰り返し再申請できる。政府が申請から半年が経過した外国人に就労を認めた2010年3月以降、申請が急増。昨年は1万901人で、11年の5・8倍。一方、認定者はバングラデシュ人の2人を合む28人にとどまった。法務省は15年以降、就労目的など趣旨に合わない理由で繰り返し申請する外国人に対し、就労許可、在留許可を取り消すよう運用を厳格化した。