難民「相当」を4割不認定 法相、有識者審査「尊重」せず

(17/6/11 東京新聞)

二〇一三~一六年の難民認定審査で、法相から任命された民間有識者「難民審査参与員」の多数が「難民認定が相当」とした申請者三十一人のうち、法相が「不認定」と覆したケースが約四割の十三人に上ったことが、法務省への取材で分かった。同省は参与員の意見を「尊重する」との方針を公表しているが、その方針と異なる側面が明らかになった。 (岡本太)

難民問題が世界的課題となる中、受け入れに消極的と批判されることの多い日本の難民認定の実態が改めて浮かび上がった。

参与員は、入管難民法に基づき法相から認定の是非を審査するよう任命された法律や国際情勢に詳しい学識経験者ら。国内外から難民認定に消極的だとの批判を受け、認定手続きの中立性を高めるため、〇五年に導入された。

外国人が難民認定を求めて申請すると、入国管理局の職員が一次審査をするが、不認定となり異議を申し立てた場合、参与員の審査を受ける。参与員は三人一組で審査し、難民認定すべき理由があるかどうか、一人ずつ意見を出す。

意見に法的拘束力はないが、入管難民法は「法相は参与員の意見を聴かねばならない」と定める。同省は「法相は参与員の提出した意見を尊重して、審査請求に対する裁決を行う」との方針を公表している。

参与員制度が始まった〇五~一二年、参与員三人のうち二人以上の多数が「難民相当」と意見した八十四人すべてが難民認定された。ところが、一三年に入ると認定されないケースが出てきた。一六年までの四年間、三十一人について多数が「難民相当」と意見したのに一三年は七人、一四年は五人、一五年は一人の計十三人、全体の約四割が認められなかった。本紙が入手した法相の決定書では不認定の決定理由について明確な説明をしていない。

難民申請者の支援に取り組む鈴木雅子弁護士は「参与員の認定意見が四割もひっくり返されているというのは驚きだ。これではとても意見を尊重しているとはいえないだろう。今の政権が難民認定に積極的に動いていないことも影響しているのではないか」と指摘。

参与員の多数意見が難民認定に反映されないケースが増えたのは、第二次安倍政権が発足した一二年十二月以降と重なる。入管審判課の根岸功課長は「参与員の意見は一三年以降も変わらず尊重して決定している。個々の事情により、多数意見とは逆の判断になることがある」と説明する。

<日本の難民認定> 難民条約に基づき、人種や宗教、政治的な理由などで迫害される恐れがあると判断した場合、「難民」として認定する。認定を受けると国民健康保険や福祉手当の受給などで日本人と同じ待遇を受けられる。申請者数は年々増加し、2016年に初めて1万人を突破。13~16年に計2万6747人が申請した。だが、1次審査も含めて認定されたのは72人。1万3258人が不認定に異議を申し立てた。10年の制度改正で難民申請から6カ月経過すれば就労が認められるようになり、経済的理由での申請が急増しているとされる一方、「迫害」の解釈が狭く、認定基準が厳しすぎるとの批判もある。