(15/11/22 南日本新聞)
外国人の入国や在留に関する施策を定めた「出入国管理基本計画」を法務省がまとめた。今後5年間の指針となる。
基本計画は少子高齢化の進展を踏まえて外国人の受け入れ拡大を検討し、共生社会の実現を目指すことなどを盛り込んだ。
人口減少と労働力不足が確実な将来、どのような制度で必要な外国人を受け入れていくかは重要な課題だ。
シリア難民問題が深刻化する中、難民認定が少ない日本の対応には国際社会から厳しい目が向けられている。
政府は有識者や非政府組織(NGO)などの意見を幅広く聞き、外国人受け入れの長期計画や新たな制度づくりに向けた議論を早期に始めるべきだ。
昨年の外国人入国者は過去最多の約1400万人に上る。昨年末の在留外国人は約212万人で、総人口に占める割合は1.67%に達し、増加基調が続いている。
専門的知識や技術を持った人だけでなく、単純労働者の受け入れも「本格的に検討すべき」と計画は指摘した。背景には2020年の東京五輪による労働力不足への危機感があるとみられる。
専門的な人材については、現行の在留資格や上陸許可基準に該当しないケースも検討するとしている。門戸開放の方針を明記したのは評価できる。
一方、難民をめぐる対応は消極的と言わざるを得ない。
難民認定の運用では「新しい形態の迫害」を保護対象に加えた。アフリカの一部地域で女性であることを理由に身体的な虐待を受けている事例などを想定する。
だが、重点を置くのは就労や定住目的の悪質な申請の排除である。受け入れ難民の大幅な拡大にはつながりそうにない。
シリア難民は約400万人に上り、今年は中東地域などから約65万人が欧州に入った。欧州連合(EU)はじめ、米国やカナダなども受け入れに動いている。
日本の難民受け入れは他の先進国に比べて極端に少ない。昨年は5000人の申請に対し認定は11人、人道的な配慮が必要として在留を認めたのは110人だった。
安倍晋三首相は国連演説で難民対策として約970億円の支援を打ち出したが、難民受け入れには難色を示し、国内外から批判を受けた。
求められるのは本当に保護が必要な人への積極的な支援である。共生社会の実現には閉鎖的といわれる日本人の意識改革も必要だ。将来の多様な社会の在り方について国民的な議論を求めたい。