紛争避難者の在留認める 法務省基本計画で保護の対象に 難民認定はせず

(15/9/15 朝日新聞)

2015年9月15日16時30分

法務省は15日、外国人の受け入れに関する今後5年間の基本方針を定めた「第5次出入国管理基本計画」を公表した。申請が急増する難民認定制度では、認定の枠組みを新たに加えたものの、制度の乱用を抑えるために審査の仕組みを厳格化した。

昨年の認定はわずか11人だった難民認定制度では、紛争を理由とした申請は難民とは認定しないものの、「紛争待避機会」として初めて保護対象に位置づけ、人道的な配慮で在留を認めるとした。ただ、受け入れの対象を明確にしたことにとどまり、現在、欧州に大量流入しているシリア難民らの受け入れにつながるかは不明だ。一方、アフリカで虐待を受ける女性などを想定した「新しい形態の迫害」を受けた人は、新たに認定の対象に位置づけた。

難民に認められると定住者の在留資格を得られて生活が安定する。これに対して「待避機会」の場合、在留許可は1年ごとになる。

同時に、法務省は「就労目的など明らかに難民に該当しない人の申請が多い」として審査を厳格化する。制度の乱用が明らかな場合は、本格審査の前に振り分け、再申請には就労を認めないなどの対応をとる。

低賃金や長時間労働の問題が指摘されている技能実習制度については、受け入れ団体を管理・監督する機関を設けて、不正がないか点検する。そのうえで、実習期間の延長や、介護など人手不足が見込まれる分野では、対象職種の拡大をめざす。ただ、管理機関の設置などを盛り込んだ法案の今国会の成立は厳しい情勢となっている。

また、高い専門性や技術を持つ外国人の受け入れについては、経済成長に寄与するとして、在留許可を拡大する方向で検討する。
外国人訪日客の増加に対応するため、日本人の入国審査に顔認証による自動化ゲートを導入し、外国人の審査に人員を回せるようにする。さらにテロリストの顔画像を照合するシステムづくりもめざす。(金子元希)

■出入国管理基本計画骨子

  • 経済社会に活力をもたらす外国人の円滑な受け入れ
  • 少子高齢化の進展を踏まえた外国人の受け入れについての国民的議論の活性化
  • 新たな技能実習制度の構築に向けた取り組み
  • 難民の適正かつ迅速な庇護(ひご)の推進