難認定制度:保護に新枠組み 在留許可を明確化へ

(14/12/11 毎日新聞)

続報(14/12/27)

毎日新聞 2014年12月11日 07時00分(最終更新12月11日 12時45分)

難民認定制度のあり方を議論している法相の私的懇談会「出入国管理政策懇談会」の専門部会が近く、難民条約上の難民と認定されなくても、保護を求める一定の外国人に在留許可を与える新たな枠組みを設けるよう提言することが分かった。保護対象を明確にするよう求める。一方で就労目的の難民申請が急増しているとの指摘もあり、悪用防止策の検討も促す。法務省は提言をふまえ、2005年以来約10年ぶりとなる包括的制度改正に乗り出す。【吉富裕倫、和田武士】

◇申請悪用には防止策

日本の難民認定は年々減少傾向にある。昨年は6人に過ぎず、審査が厳しすぎるとの批判が国内外から出ている。11年以降の内戦で300万人以上が難民となったとされるシリアからの申請者はこれまで56人いたが、認定例はない。一方で「人道的配慮」から年間100人以上に一時的在留許可を与えており、シリアからの36人も含まれている。ただ、現行法に許可の基準を定めた規定がなく、入管当局の裁量に委ねられているのが現状だ。
専門部会は近くまとめる報告書で「国際的に保護する必要がある者に対しては、待避機会としての在留許可を付与するための新たな枠組みを設けるべきだ」と提言。また、難民認定の際に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発行文書や国際先例なども参照するよう求める。
一方で、観光や留学などの在留資格を持つ人からの難民認定申請も多い。審査が半年以上長引いた場合、経済的配慮から正規在留者の就労が認められるようになった10年以降、申請は急増。05年の384人から今年は11月末現在で約4500人となり、うち約82%を正規在留者が占める。就労目的で申請を繰り返す例もあるとされ、専門部会でも「保護すべき人の審査が後回しになっているのでは」と懸念する声が出た。
報告書では、制度の悪用や誤用を抑制する仕組みを更に検討すべきだと指摘。明らかに対象外の申請者を本審査前に判別する仕組みを設けることなどを促す。
専門部会は法学者や難民支援団体の代表らで構成。報告書には保護対象や手続きの明確化など4分野の提言を盛り込み、合意しなかった意見も併記する。11日の最終会合で了承されれば12日の懇談会に提出する。

【ことば】難民認定制度

国連難民条約は難民を「人種、宗教、政治的意見などを理由に迫害を受ける恐れがあり国外に逃れた人」と定義している。日本も条約に加入し、1982年に認定制度を整備した。本人の申請を受けて法相が認定か不認定を決め、認定されれば定住資格が得られる。年間認定数は国によって数十人単位から1万人以上まで幅がある。