(社説)難民受け入れ 手を差しのべる姿勢を

(15/8/13 朝日新聞)

2015年8月13日05時00分

人種、宗教や政治的意見などで迫害を受けるおそれがあり、母国にとどまれない難民を、どう受け入れていくか。

法務省が近く、今後5年間の外国人受け入れに関する基本計画を決めるという。

日本の難民認定数は過去3年間で計35人にとどまる。過去をさかのぼっても、受け入れは他の主要国より2、3けた違いで少ないと指摘されてきた。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、昨年の世界の難民申請者は、前年の54%増で過去最多になった。

難民は、いまの世界で最も切迫した人道問題の一つである。新計画は、国際責任をきちんと果たすものにすべきだ。

法務省は計画案を6月に公開した。高度な専門性のある人、東京五輪に向けて建設分野で働ける人など日本側が必要とする外国人の受け入れを強調する一方、難民については後ろ向きの印象を与えている。

迫害のおそれがあるとはいえないのに難民申請する乱用が多いと現状を分析。そのうえで、乱用が明らかな場合は本格審査前に振り分け、一度認定されなければ再申請できるのは新しい事情が生じたときに限るなどの対策を盛り込んだ。

一方で、法務省の有識者会議が、国際条約でいう難民には当たらないものの保護の必要性がある人を救済するしくみを求めていたが、計画案はその具体的な道筋を示さなかった。

そんな内容をめぐっては、UNHCRが懸念を公式に表明する異例の事態になった。真に保護が必要な人も偽装難民とされるおそれがあると指摘した。国際機関の率直な意見として、法務省は耳を傾けるべきだ。

難民申請中は、正規滞在の人であれば就労を認められる。ふつうの外国人が日本国内で働ける枠が限られる中、就労資格を求めて難民申請する人はいるかもしれない。だが、だからといって認定の幅を狭めることには慎重であるべきだ。

明らかに難民にあたる人でも自らそれを証明するのは簡単ではない。難民になる事情にはさまざまな混乱が伴うのだから、証拠の文書を求められても困難な場合は珍しくない。
審査のあり方を見直すのであればむしろ、なぜ各国に比べてここまで認定が少ないのか、審査が厳格すぎないかを、焦点に据えるべきだろう。

中東、アフリカなどの状況では、保護を求めて日本までたどり着けない人が圧倒的に多い。日本発でどう助けの手を差しのべるか、考えるときだ。