(14/05/20 NHK「ニュースおはよう日本」から)
鈴木「シリア。私たち日本人にとっても身近な問題になってきています。」
現地で、苦しむ人たちを救おうと活動する日本人。
そして、日本に助けを求めてやってくるシリア人。
鈴木「シリアの難民の問題は、日本と無関係ではいられなくなっています。」
シリアの最前線 難民支援する日本人
シリアで働く日本人女性が一時帰国しました。
UNHCR ダマスカス事務所 赤阪陽子さん「(シリアでは)街を歩かない。移動は常に防弾車。」
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所の赤阪陽子(あかさか・ようこ)さんです。
去年(2013年)1月から首都ダマスカスで勤務しています。
スタッフ「われわれは軍人ではない。」
赤阪さんたちは、先月(4月)、援助物資を届けるために、激戦地アレッポに入りました。
政府側と反政府勢力の双方と交渉して4時間だけの停戦を実現させました。
「急げ、急げ。」
命の危険と隣り合わせの活動です。
UNHCR ダマスカス事務所 赤阪陽子さん「スナイパー(狙撃兵)がいるんですよ。たまたま流れ弾が飛んで来たんですけどね、私たちの乗っている車に。
トラックとか配送があるんですけど、危険だから行ってくれない人もいたり。
援助物資を持って行きたい所に行けないところが、一番の難しさだと思いますね。」
赤阪さんは先週末、都内で開かれたシリア難民支援の報告会に出席しました。
UNHCR ダマスカス事務所 赤阪陽子さん「援助に頼らざるをえない人たちへのサポートは必ず大事だと思います。」
急増する難民に対応するために、さらなる国際社会の支援が必要だと訴えました。
UNHCR ダマスカス事務所 赤阪陽子さん「私たちがこうやって話をしている間にも、例えば一つ爆撃があればそこで亡くなっている人がいる。国を出て行く人がいるという事象が起こっているわけで、そのことを忘れないでほしい。」
内戦から逃れ日本に 難民申請するシリア人
増え続けるシリア難民。
周辺国での受け入れは限界に達しています。
遠く離れた日本にまで逃れてくる人たちも出てきています。
30代のこの男性は、激戦地のアレッポから1年前に逃れてきました。
シリア国内に残る家族の安全を考え、顔を出さないことを条件に取材に応じました。
男性の収入は日雇いの仕事で得る月2万円ほどです。
持ち物は着替えの詰まったバッグ1つだけ。
男性「カバンの中の服と現金1万3,000円。これが全財産です。」
住む家はなく、知り合いの家を毎日のように転々としています。
男性「今晩泊まらせてもらえませんか。」
男性は、これまでビジネスで何度も訪れ、平和で豊かな国という印象を持っていた日本に逃げてきました。
日本政府に保護してもらいたいと、難民申請をしています。
在留特別許可を得たものの、今のところ、難民認定はされていません。
男性「生活は悲惨です。家はないし、仕事もありません。こんなひどいことはありません。」
この男性を含め、現在日本で難民申請をしているシリア人は52人に上りますが、これまでのところ、認められた人はいません。
2年前に逃れてきたユーセフ・ジュディさんもその1人です。
解体工場などで働き、生活しています。
反政府デモ「アサド大統領は出ていけ。」
日本に来たきっかけは、シリア北東部の故郷で起きた反政府デモでした。
ジュディさんもデモに参加し、政府に追われる身になったと言います。
ユーセフ・ジュディさん「殺されるか、家族を残してシリアを出るかの選択しかなかったのです。それが日本にいる理由です。」
一緒にデモに参加した、いとこ2人と、ブローカーが手配した航空券で飛行機に乗り、たどり着いた先が日本でした。
今一番気がかりなのは、残してきた家族です。
ジュディさんがシリアを出た後、故郷に戦火が広がり、妻は子ども2人を連れてイラクの難民キャンプに避難しました。
1日でも早く安全な日本に家族を呼び寄せたくても、難民認定されなければかないません。
ユーセフ・ジュディさん「みんな元気か、そっちの状況はどうだ。」
妻「こっちの状況はよくないわ。キャンプはすごく暑くて、子どもたちはみんな疲れてる。娘は“いつパパのところに行くの?”って聞いてくるのよ。私たちをいつここから連れ出してくれるの。」
ユーセフ・ジュディさん「日本は法律が厳しくてなかなか許可が下りないんだよ。」
家族が暮らしているテントは日本政府が提供したものです。
ジュディさんは海外にいる難民だけでなく、日本に逃れて来たシリア人にも手をさしのべてほしいと考えています。
ユーセフ・ジュディさん「子どもたちのことを考えると眠れません。
子どもたちを日本に連れて来ることさえできれば、ほかに何も望みません。」
阿部「周辺国でシリア難民の受け入れが限界に達していることを受けて、UNHCRでは、欧米や日本などにも受け入れを要請しています。」
鈴木「これまでのところ20か国以上が受け入れを決めましたが、日本は検討中だということです。」