ロヒンギャ迫害、解決進まず 「自主帰還は困難」国連高等弁務官が見解

(18/2/14 東京新聞)

2018年2月14日夕刊

 【ニューヨーク=赤川肇】ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャが迫害され、六十八万人以上がバングラデシュに逃れている問題で、フイリッボ・グランディ国連難民高等弁務官は十三日、迫害の解決が進んでいないとして「難民が自主帰還できる状況ではない」との現状認識を示した。国連安全保障理事会の公開会合で述べた。

 グランディ氏は、ミャンマーで国連などの人道支援がいまだに厳しく制限されていると問題視。帰還に向け、移動の自由や教育を受ける権利を含むロヒンギャの市民権の確立と、平和的に共存できる地域社会の再建を求めた。

 ミャンマーとバングラデシュ両政府は昨年十一月、難民の帰還で合意したが、グランディ氏は今も難民が増え、今月だけで千五百人が国境を越えたと指摘。三月の雨期を前に、洪水や地滑りの危険地域にいる十万人以上の安全対策が急務で、避難の長期化に伴い教育や生計を立てるための技能指導も必要だと呼び掛けた。

 こうした対策を怠れば「幻滅や過激化を招き、ひいては難民らを性的暴行や人身売買など虐待や搾取の危険にさらす」と強調。国際社会の関与を訴えた。

 迫害問題で安保理は昨年十一月、議長声明で「深刻な懸念」を表明。この日の会合でヘイリー米国連大使は「安保理は責任を果たしていない」として、ミャンマーの政府軍やアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相の責任を追及する決議を主張したが、ロシアや中国は「現状は概して安定している」(中国の馬朝旭(ばちょうきょく)・国連大使)などと否定的な見方を示した。