(18/1/16 東京新聞)
2018年1月16日 朝刊
【バンコク=北川成史】ミャンマーでイスラム教徒少数民族ロヒンギャが迫害を受けている問題で、隣国バングラデシュに逃れた難民の間で感染症「ジフテリア」が流行し、子どもら三十一人の死者が出ている。両国政府の作業グループは十五日、難民の帰還に向けた協議に着手。今月中にも帰還を始める方針だが、順調に進むか不透明で、難民の健康状態に懸念が強まっている。
国連児童基金(ユニセフ)などによると、昨年十一月八日~今月十一日、バングラデシュ南東部コックスバザール周辺の難民キャンプで、約四千件のジフテリアの疑い例があり、三十一人が死亡。死者の約半数を子どもが占めた。
ユニセフなどは約四十八万人の難民の子どもを対象に予防接種を実施。先月末までに約三十二万人が予防接種を受けた。
ユニセフの担当者は「難民はキャンプで密集した環境での生活を強いられ、健康状態に深刻な影響を受けている」と警鐘を鳴らす。
ジフテリア菌に感染すると、のどの痛みや発熱が起き、心筋炎で死亡するケースもある。患者のせきなどで飛沫(ひまつ)感染するが、予防接種を受ければ防止できる。
ミャンマーとバングラデシュ両政府は昨年十一月二十三日、二カ月以内に難民の帰還を開始する方針で合意した。ミャンマーの首都ネピドーで十五、十六両日行われる作業グループの会合では、帰還手順が議論される見通しだが、家を焼き打ちされた難民の行き先など、課題は多い。
国際移住機関(IOM)によると、昨年八月二十五日にミャンマー西部ラカイン州でロヒンギャ武装勢力と治安部隊が衝突後、バングラデシュに逃れた難民は六十五万人を超えている。