難民審査の変更 救済への道狭めないが

(18/1/16 北海道新聞)

01/16 05:05

法務省はきのう、難民認定制度の運用を変更した。就労を目的にした難民申請が急増しているため、申請者に一律に認めてきた在留や就労を制限する。

就労目的の「偽装難民」の審査に追われ、保護されるべき人たちの審査が長引くことがないよう対策を講じる必要はあるだろう。

ただ、日本の難民認定数は他の先進国に比べて桁違いに少ない。認定の基準を見直すべきだ、との指摘もある。

偽装難民対策として制限を強化するあまり、救済が必要な人が漏れるのであれば本末転倒だ。きめ細かい対応が求められる。

難民申請は一昨年、初めて1万人を超え、昨年は9月未までで1万4千人余りと急増している。

これまでは難民認定の審査中でも申請から6カ月後には一律に就労が認められてきた。
このため、就労目的で再申請を繰り返す人が相当数いたという。

昨年、申請から半年たたない「偽装難民」を不法に働かせたとして、札幌市内の解体業者らが逮捕された事件は、この制度を悪用したものだ。

今後は書面審査で申請者を選別し、就労目的で難民に該当しない人や、前回と同じような理由での再申請には在留資格を与えない―などの措置を取る。

これに対して、難民を支援してきたNPO法人などからは懸念の声が聞かれる。

難民支援協会(東京)は「難民申請者の生存を脅かすことにつながる強い危惧を覚える」との声明を出した。再申請して難民認定された人も少なくないからだ。

一昨年、日本が認定した難民は28人、昨年も9月未時点で10人。地理的、文化的背景が違うとはいえ、数千、数万を受け入れる欧米先進国とは比べようもない。
専門家からは、日本は難民の定義を狭くとらえ、迫害の証明を難民自身に過度に求めている、などと批判されてきた。

似た境遇の親類同士でも、日本では不認定になったのに、欧州などでは認定された例もある。

人命にかかわることであり、しゃくし定規に捉えるのは禁物だ。

深刻な人手不足を反映し、外国人労働者は100万人を超えた。うち4割は留学生と、働きながら技術を学ぶ技能実習生だ。

就労目的の難民申請を抑制するだけでは根本的な解決にはつながらない。外国人労働者の受け入れ方法について真剣に議論する時期に来ている。