2013年アメリカ人権報告書 ―日本 (暫定訳)

アメリカ国務省は、2月27日に2013年の世界の人権報告書を発表しました。
国別報告の中で日本の問題も細かく触れています。
日本の新聞では「ヘイトスピーチ(憎悪表現)のデモに対する懸念を示した。」のみ強調され報道されていますが、冒頭での継続する人権問題として「detention of asylum seekers」(庇護希望者の収容)が挙げられています。
難民条約の「ノン・ルフールマンの原則」(送還しない)に違反する、庇護希望者(難民申請者)の入管への収容は国際的にも問題になっています。
また日本の難民問題については、2ページほど使い細かく報告が載っています。
「原発避難民」を「国内避難民」として「難民」の項で扱っています。
国外からは日本の難民をどのように見ているのか参考になると思います。

暫定訳では、難民に関する項目(d)のみを取り上げました。

全文はここで
Country Reports on Human Rights Practices for 2013 Japan

翻訳日:2014年3月
翻訳者:RAFIQ


2013年人権報告書 -日本
エグゼクティブ・サマリー

日本は、議院内閣制を採用する立憲君主制国家である。12月16日の衆議院選挙の結果、12月26日、自由民主党の安倍晋三総裁が首相に就任した。7月21日の参議院選挙で連立与党が過半数を獲得した。この選挙は自由かつ公正な選挙とみなされた。治安部隊は文民当局の監督下にあった。治安部隊による人権侵害は無かった。
主な人権問題には公判前の拘留者、刑務所や拘置所内の状態に対する適正な手続きの欠如、児童ポルノの非有罪化を含む子どもからの搾取が挙げられる。
他の存続している人権問題の懸念には少数民族グループ、レズビアン、ゲイ、性転換、障害者、庇護申請者の収容、家庭内暴力、女性に対するセクシャルハラスメント、外国人研修生からの搾取を含む人身売買などがある。
政府は人権侵害を禁止する法律を執行し、侵害行為を行った政府職員を訴追した。

d. 移動の自由、国内避難民、難民保護および無国籍者
法律により、国内の移動、外国旅行、移住、本国帰還の自由が規定されており、日本政府は、全般的にこれらの権利を尊重した。日本政府は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)およびその他の人道支援組織と協力して、国内避難民、難民、庇護希望者、無国籍者、およびその他の関係者に保護と援助を行った。

国内避難民
2011年3月の地震、津波および福島第一原子力発電所の事故の後、政府は全般的に、避難所およびその他の保護サービスを十分に提供するとともに、移住または再建の選択肢を提供しようと努めた。マスコミは組織の無秩序、住宅の再建や放射能汚染地区の除染の進行の遅れを理由に復興庁を批難した。7月30日復興庁は2012年度の被災地の復興予算に予定されていた額の35%が使われていないと発表した。8月12日の政府の調査データによると約290,000人の避難者のうち、105人が避難所に避難しており、274,000人が仮設住宅に住んでいる。

難民の保護
庇護へのアクセス
日本の法律は、庇護の付与あるいは難民の認定を規定しており、日本政府は既に日本に在住する難民を保護する制度を確立している。3月に政府は国連第三国定住プログラムに参加するビルマ難民の選考基準を緩和した。
難民と庇護申請者は、難民審査参与員制度の下での異議申し立て審問への参加を弁護士に依頼することができる。法的支援を求める多くの難民および庇護希望者は、政府の援助による法的支援を受けることができなかったが、日本弁護士連合会が、金銭的な余裕がない申請者に対して無償で法律支援を行うプログラムに、引き続き資金を提供した。2012年には2,545人の難民申請者があり、日本が難民認定を開始して以来、最多となった。当局が難民と認定した数はわずか18人であり、これに人道的な配慮が必要として在留を認めた112人を加えた総庇護数は2011年度の半数以下である。庇護を受けた130人のうちおよそ80パーセントがビルマ人であり、難民グループによると、ビルマ人は優遇されていた。NGOは難民認定または人道配慮数の減少は、ビルマに対する入国管理局職員の認識の変化によると考えた。すなわち、同国がより自由で民主的な国家へと移行していることから、庇護の必要性が低下したというものである。2012年に難民の認定を受けた18人のうち、当局は当初、13人の認定を認めなかったが、異議申し立てを受けて難民と認定した。
政府と日本弁護士連合会、および日本の信頼できる難民支援NGOで構成されるネットワーク「なんみんフォーラム(FRJ)」は、成田空港に到着し、仮上陸または仮滞在の許可を得た難民認定申請者に対し、住居、社会福祉および法的サービスを提供する試験的プロジェクトを延期した。FRJは
その年に10人の庇護希望者が関与する7つの事例の監督を行い4人の庇護希望者の関与する3件の事例を終結させた。FRJ は9月の時点で残っていた6人の庇護希望者から成る3件の事例への取組みを継続した。

ルフールマンの原則
政府は、生命や自由が脅かされると考えられる国への国外退去あるいは送還から、難民をある程度保護した。難民グループは2013年に、日本政府が庇護申請を判断する際の証拠の基準が高いことについて、引き続き懸念を表明した。在日ビルマロヒンギャ人協会は難民認定をされていない、いわゆる仮放免または一時的滞在が認められた者が47名いることを確認した。申請の却下された後、9月時点で33人の在日ロヒンギャ人が法務省に難民認定の再申請をした。更に、1件は最高裁に持ち込まれ、他1件が東京地裁にかけられることになっている。
年間の庇護希望者についてのルフールマン返還の事例報告はなかった。

難民の虐待
アムネスティ・インターナショナルは、収容施設に収容されている庇護希望者および難民の虐待を主張した。

雇用
難民認定申請者は、有効な短期滞在ビザを所持し、ビザの有効期限内に収入を得る活動に従事する許可(資格外活動許可)を申請しない限り、通常就業が認められていない。許可を得るまでの間、政府が出資する公益財団法人、アジア福祉教育財団の一部門である難民事業本部が、少額の給付金を支給する。しかし、予算上の制約および申請者数の増加により、多くの申請者がこの給付金を受けられない状態が2013年も続いた。

基本的なサービスへのアクセス
難民は依然として、他の外国人と同様、住居、教育、雇用の機会を制限される差別を受けた。上記の就業する権利を得る条件を満たす人を除き、難民認定が未決、または異議申し立て手続き中の人は、社会福祉を受ける権利がなく、過密状態の政府のシェルターや、労働法の監督対象にならない違法な雇用、またはNGOの援助に頼るしかなかった。
あるNGO団体は入国管理センターは非常勤の精神科医や臨床心理学者を施設内に置く、収容者をもっと頻繁に一般の病院に差し向けるなどの医療アクセスの改善があったと言及した。

一時的な保護
政府はまた、難民と認定されない可能性のある個人を一時的に保護した。2012年にこうした保護を受けた人は112人で、対2011年比で半分以下の減少となった。