(11/8/27 読売新聞)
日本に昨年、難民申請した外国人は1202人で、10年前の5倍以上に増加したことがわかった。日本の「難民条約」加入から、今年で30年。難民申請中の外国人の就労は認められておらず、法務省は、申請者の生活困窮が治安悪化にもつながりかねないとして、対応を検討している。
同省入国管理局によると、2007年まで年数百人だった申請数は、08年以降、1000人以上で推移。昨年の申請者はミャンマー人が最多の342人で、次がスリランカ人の171人。07年頃から両国で政情が悪化し、同じアジアの日本を頼る傾向が高まったとみられる。
一方、認定審査の期間は、母国での迫害の有無を慎重に見極めるため1?2年かかる。結果待ちの申請者は現在約2000人に上るが、昨年の認定率は2%と10年前の3分の1に減少している。同省は08年以降、ミャンマー人を中心に毎年300人以上の在留を人道的措置として特別に許可。昨年からは、タイのミャンマー難民を受け入れる「第三国定住」制度も導入しており、「受け入れ数はまだ少ないが、できる限りの施策を講じる」としている。
◆仕事できず「いても帰っても地獄」 スリランカ男性 申請2年
難民申請して2年になるスリランカ人男性・カピラさん(39)(仮名)は、妻(34)、日本生まれの長男(3)と大阪市内のアパートで暮らす。申請は一度却下され、異議を申し立てたが昨年12月の面接以降、入管から連絡はない。外務省の保護費(月約4万5000円と家賃)は支給されているが、就労許可は得られず、「どんな仕事でもするのに」と途方に暮れる。
親族の選挙運動に絡んで対立候補側に命を狙われ、2006年、妻と来日。その後土木作業員をしていたが、09年にオーバーステイで逮捕されて国外退去処分に。大阪府内の入管施設に収容中、政治的迫害が難民申請理由になると知って申請し、処分は保留された。
同胞の支援で昨年3月から家族で生活。だが難民認定がない限り生活保護も受けられず、長男には国籍もない。長男が高熱を出した時もぬれタオルで体をふくぐらいしかできなかったといい、「いても帰っても地獄。遠いスリランカでの迫害の事実を調べるのは大変と思うが、少しでも人間らしく生きさせてほしい」。
図=日本の難民申請と認定数の推移
写真=「認定結果を家でじっと待つだけ」と室内で洗濯物を干しながら話すカピラさん(大阪市内で)
(2011年8月27 読売新聞社 大阪夕刊)