「国は難民認定を」タミル人男性の訴え認める 東京地裁

(18/7/5 NHKニュース)

2018年7月5日17時44分

内戦が続くスリランカを離れて、日本に入国したタミル人の男性が、難民と認定するよう求めた裁判で、難民と認定することを国に義務づける異例の判決が言い渡されました。

スリランカの少数派のタミル人の58歳の男性は、内戦が続いていた母国を離れて12年前に日本に入国し、難民認定を求める訴えを起こして、7年前に勝訴が確定しました。その後、改めて難民申請を行いましたが、認められず、再び訴えを起こしたのに対し、国は「内戦はすでに終結し、情勢が改善されている」と主張していました。

東京地方裁判所の清水知恵子裁判長は5日の判決で、「内戦の終結後も、タミル人で武装勢力との関係が疑われると、拘束や拷問の危険にさらされている。難民条約における難民ではなくなる理由には該当しない」と指摘し、難民と認めなかった国の決定を取り消したのに加え、難民と認めるよう国に命じました。難民認定を国に義務づける判決は異例です。

男性は「とてもうれしいです。日本社会に貢献したい」と話していました。また、原告側の渡邉彰悟弁護士は「入国管理局には難民が救われていない現状を踏まえた取り組みを求めたい」と話していました。

法務省入国管理局は「今後の対応については検討のうえ、適切に対応したい」とコメントしています。

 難民申請急増も認定はわずか

難民の認定を申請する外国人は急増しています。

法務省によりますと、去年1年間に難民の認定を申請した外国人は、1万9600人余りに上り、おととしよりもおよそ80%増えて、過去最多となりました。

申請者の国籍は82か国に上り、フィリピン、ベトナム、それにスリランカなどの上位5か国で、全体のおよそ7割を占めています。

一方で、去年1年間に難民と認定されたのは20人で、認定はされなかったものの、人道的な配慮を理由に在留を認められたのは45人でした。

法務省入国管理局は「就労目的とみられるケースが目立ち、難民条約で規定されている難民に明らかに該当しない乱用的な申請が増えている」としています。

一方、難民申請を求める側の弁護団は「偽装難民問題が声高に言われるが、それ以前に、正しい認定ができていない」と批判しています。