入管脱衣所を監視撮影 外国人収容者「辱め」 茨城の施設

(18/9/24 京都新聞)

強制退去を命じられた外国人を収容する東日本入国管理センター(茨城県牛久市)で、収容者が使うシャワー施設の脱衣所などに監視ビデオカメラが設置されたことが23日、分かった。センターはシャワー施設内で収容者の破壊行為が相次いだための抑止策と説明するが、全裸になる場所の撮影にプライバシー侵害との批判が出ている。

【写真】シャワー施設への監視ビデオカメラ設置が判明した東日本入国管理センター=茨城県牛久市

センターや外国人支援団体によると、6月以降、センターは複数のシャワー施設の通路や脱衣所にビデオカメラを設置。収容者のシャワーブースへの出入りを撮影し始めた。
センターは「破壊行為は器物損壊罪に該当する上、秩序維持などの観点からも許容できない。プライバシーに配慮し、破壊行為など異常がない限り映像を見ない」とし、破壊行為がなくなった一部のシャワー施設ではカメラを撤去したと説明。収容者は21日現在340人で全員男性だが、今回のカメラ設置の判断に収容者の性別は無関係で、女性の場合であっても検討するとしている。
支援者によると、収容者の間で「裸を撮影されるのは辱めだ」と不満が高まっている。
人権問題に詳しい指宿昭一弁護士は「憲法は基本的人権としてプライバシーの権利を保障しており、裸になる場所で人の体を撮影する行為には、器物損壊防止のためであっても憲法上問題がある」と指摘している。
センターはまた、収容者へ支給する食事に髪の毛などの異物混入が今年1~6月で80件発生したと明らかにした。2016年は年間40件、17年は同60件と急増しており、給食業者に再発防止を指導していると釈明した。入管施設を巡っては最近、収容期間の長期化が進んでおり、自殺や自殺未遂が相次いでいる。

入管施設への収容 在留資格がなく、強制退去を命じられた外国人は東京、大阪などの地方入国管理局や東日本入国管理センター(茨城県牛久市)、大村入国管理センター(長崎県大村市)など全国17カ所の収容施設に拘束される。難民申請者も多い。収容者数は8月末時点で1409人。自殺や病死で2007年以降、全国で13人が施設内で死亡した。収容長期化により職員と収容者とのトラブルも増加、大阪入管では昨年7月、職員による制圧の際トルコ人が右腕を骨折した。

施設側理由の「破壊行為」 背景に長期拘束・劣悪さ

ビデオカメラをシャワー施設に設置した理由として東日本入国管理センターは収容者の破壊行為を挙げる一方、専門家はその背景に収容者のストレスの高まりを指摘する。法務省が非正規滞在者の対応を厳格化した結果、収容期間が長期化し、絶望した収容者の自殺や自殺未遂が相次ぐ。カメラ監視では解決にならないとの声もある。
入管施設の収容期間は法的な上限がない。法務省のまとめでは7月末時点で全国17の入管施設に拘束中の1309人のうち709人(54%)が半年以上の収容で、過去5年で最高の割合。5年半以上の収容者もいる。
「十分な医療を受けられない劣悪な環境」(収容経験者)もストレス要因。自殺未遂したある収容者は「いつ出られるか分からない上、申し出ても1カ月半も病院へ連れて行ってもらえず、精神的に疲れた」と絶望感を語った。4月には長期収容に抗議するハンガーストライキも発生した。
入管の事情に詳しい港町診療所(横浜市)の山村浮平医師は「先の見えない収容と劣悪な環境が怒りを爆発させる原因だ」と指摘。「仮に破壊があったとしても、再発防止のためには原因の特定が優先されるべきだ。カメラ設置はストレスをさらに与えるだけで解決にならない」と批判する。