(12/12/19毎日新聞)
毎日新聞 2012年12月19日 02時30分
不法滞在者の強制送還を効率化するため、法務省は、一度に多数を帰国させられる専用チャーター機の活用方針を固めた。一般客も乗り合わせる航空機で対象者を1人ずつ送り出す現在の方法より、費用と安全の両面で利点があるとしている。同省は来年度予算の概算要求で関連費用約3000万円を計上。予算が通れば、年間150人程度にとどまっていた送還拒否者の帰国人数を350人程度に増やせるという。
不法滞在者には、同省が「退去強制令書」を出した上、原則として入管施設に収容し、飛行機などで母国へ帰国させている。昨年1年間で退去強制令書が出された不法滞在者は9348人で、国別では中国3103人、フィリピン1681人、韓国1172人の順。しかし、送還を拒んだり、難民認定手続きをして収容が長期化するなどし、仮に収容を解かれているケースはこの5年で約3倍に増え、10月末現在で約2500人に上る。
送還費用(航空券代)は原則自己負担だが、送還拒否者は帰国する意思がないため、国費を充てざるを得ない。また、機内で不測の事態が起きないよう付き添う2?5人の入国警備官の航空券代も必要となる。現在の方法では送還拒否者が出発前の機内で大声を出すなどして航空会社から搭乗を拒否され送還が中止となることもあり、多い年は10件程度もあったという。
◇費用3割に抑制
こうした事情から、同省はチャーター機で帰国先が同じ100人程度を一度に帰国させる方法を検討し、コストを試算。送還対象者1人当たりの費用は、最大で現在の約3割に抑えられることが分かった。
同省幹部は「チャーター機の活用は欧米では一般的。コスト、安全の両面で一石二鳥の方法」と話している。【伊藤一郎】