(18/1/13 信濃毎日新聞 社説)
日本の難民認定制度がより厳しくなる。
政府はこれまで、申請者の認定審査中の就労や、再申請を認めてきた。来週から就労の仕組みは廃止し、難民条約に規定された理由に該当しなければ、直ちに強制退去の手続きを取るなど厳格化する。
法務省は、仕事を目的とした申請者が急増していて、保護が必要な人たちへの対応に支障を来していると説明している。
もっともらしい理由だけれど、手続きを速めることで「保護が必要な人たち」まで排除することにならないか。
日本の難民認定基準は欧米に比べて厳しく、認定率も際だって低い。“難民鎖国”と批判されるゆえんだ。人道にもとることのない対応を政府に求める。
認定制度は2010年に改められた。申請中の人たちの生活を考え、申請から6カ月が過ぎれば就労が認められるようになった。
10年に1200人だった申請者は、アジアの国々を中心に増え続け、17年は1~9月だけで1万4千人を超えた。就労目的が多いのは事実で、借金逃れや知人らとのトラブルを申請理由に挙げる人たちも相当いる。
かといって、申請者を手早くふるいにかけることだけで、問題が解決するとは思えない。
申請者が年7500人まで増えた10~15年、難民認定は、わずか年6~39人で推移した。内戦が続くシリアからも16年末までに69人が申請したが、難民に認定されたのは7人だけだった。
難民条約は、人種や宗教、国籍、政治的意見を理由に、迫害を受ける恐れがあるため国外に逃れた人を難民と定義する。日本政府は条約に準拠しているというより、こだわり過ぎだ。
いまは戦争や内戦で故郷を追われる人たちの方がずっと多い。負担に苦しみながらも、中東やアフリカの国々、ドイツなどは積極的に受け入れている。
しゃくし定規に定義を当てはめるのではなく、相応の理由があれば在留を認め、公的支援を受けられるようにする柔軟な制度の運用が欠かせない。
難民申請は結果が出るまで平均10カ月、不服申し立てでは2年も待たされる。その間の生活支援は民間団体に頼っている。これらの面の改善も急ぎたい。
不適切な申請を排除するだけでは、国際社会の理解は得られない。「保護すべき人を守る」原点を忘れず、他の先進国に見劣りしない制度を目指してほしい。
(1月13日)