難民申請者がホームレスに 「鎖国」から政策転換を

(12/12/24 京都新聞)

(「核心評論」より)

助けを求めて日本にやってきたのに、冬の寒空に放り出された―。そんな驚くべきことが起きている。難民認定を申請した外国人に対し、政府による生活費や宿泊施設の提供が遅れ、野宿を余儀なくされる人が続出しているのだ。

日本は1981年に難民条約に加入。人種や宗教、政治的意見などを理由に、母国で迫害される恐れのある難民(条約難民)を保護する義務を負った。政府は難民と認定した人には在留を認め、日本語教育や就職支援を行っている。
難民申請者にも、因窮している場合は認定か不認定の結論が出るまで、外務省が1日1500円の生活費などの「保護費」を支給し、アパートなどを無償提供してきた。

ところが、今年は1~10月だけで難民申請者が2004人に達し、過去最多だった昨年1年間の1867人を上回った。一方、保護費を詐取したとして申請者が逮捕される事件が相次ぎ、外務省は審査を厳格化した。
このため、以前は保護費などを申し込めば数日で支給が始まったのが、1カ月半以上もかかるように。この間に所持金を使い果たしてホームレスになる人が、人権団体によれば50人を超えた。暑いアフリカの出身者が中心で、慣れない気候に体調を崩す人もいる。

実は2008、09年にも、難民申請者の増加で保護費の予算が底を突き、支給が遅れたり、対象が制限されたりした。当時も家賃を払えなくなる人が出るなど混乱したが、今年のように多数の申請者が駅や公園で寝泊まりする事態は初めてだ。
取る物も取りあえず、母国を脱出してきた難民申請者にとって、保護費は最後の命綱だ。外務省の担当者は「政府が全ての責任を持つことはできない。政府と民間で支え合うべきだ」と、保護費支給開始までの支援を人権団体に求めている。だが、最低限の生活保障は政府の責任である。

日本が難民認定したのは昨年21人のみで、他の条約加入国に比べ2桁も3桁も少ない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が難民の可能性が高いと指摘した人を強制送還したこともある。母国政府からパスポートを取得しにくい難民にとって、偽造旅券の使用などは珍しくないのに、不法滞在として申請者の身柄を拘束することも多い。

こうした「難民鎖国」ぶりは海外にも知られている。条約難民とは別に、日本は「第三国定住」の枠組みで10年、タイ国境キャンプのミャンマー難民を受け入れ始めたものの、今年は希望者がゼロだった。このままでは、日本を目指す難民はいなくなるだろう。国際社会から見捨てられないよう、難民政策を根本から見直す必要がある。
手始めに、否その前に、ホームレスとなっている難民申請者に政府は今すぐ住まいを用意するべきだ。
(共同通信編集委貝 原真)