(17/6/19 中日新聞)
日本で難民と認められず、在留資格も得られなかったパキスタン国籍の男性(55)が今年4月、第三国のカナダから永住権を付与されていたことが分かった。日本の在留資格がないのに、第三国で永住権が認められるのは異例。名古屋難民弁護団事務局長の川口直也弁護士は「カナダは男性を事実上の難民だと認め、人道的配慮をしたのではないか」と評価する一方、日本の厳しい認定基準を批判する。
男性はパキスタンでは少数派のキリスト教徒で、多数派のイスラム教徒からの迫害を恐れ、1993年に来日した。母親はほぼ同時期にカナダに逃れ、申請後間もなく難民認定された。男性もカナダへの移住を希望したが、日本の在留資格が得られないまま2004年ごろに不法滞在で逮捕され、名古屋入国管理局に収容された。
その後、入管に難民認定を申請したが不認定に。さらに名古屋地裁に提訴したが認められず、名古屋高裁や最高裁でも覆らなかった。さらに2度の難民認定や在留資格の申請も認められなかった。
最終的に、母親の難民認定手続きを行ったカナダの弁護士が同国政府と交渉。昨年8月、男性にも永住権の取得が許可され
た。男性には日本の在留資格はなかったため、国外への強制退去処分として今年3月にカナダに出国した。
男性の代理人の川口弁護士によると、日本以外の国から永住権が認められて出国した事案は、少なくとも14年に3件ある
が、いずれも日本での在留資格者だったという。
川口弁護士は「在留資格がない人間に、他国が永住権取得を認めるケースは聞いたことがない」とした上で、「日本はカナダと同じ難民条約に加盟しているのに、これほどの差があるのはおかしい」と批判した。
(中日新聞)