世界難民の日 日本も受け入れ拡大を

(17/6/21 北海道新聞)

06/21 08:50

紛争や迫害によって国内外に逃れた難民、避難民が2016年末時点で6560万人に上った。

きのうの「世界難民の日」に合わせて、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が発表した。

日本の人口のほぼ半分に相当する数である。しかも前年末より30万人増え、過去最高を更新した。
気になるのは、消極的な日本の対応だ。昨年、初めて1万人を超える受け入れ申請があったが、難民に認定された人はわずかに28人にとどまった。

難民の増加は切迫した人道問題である。日本政府は正面から向き合い、積極的な受け入れ策を打ち出すべきだ。

UNHCRによると難民の出身国は内戦状態が続くシリア、アフガニスタン、南スーダンが多い。

受け入れはトルコが290万人と3年連続の最多で、パキスタン、レバノンがこれに続く。

問題は、こうした周辺国は既に飽和状態にあることだ。

このため、欧米の先進国にも大勢の人が難民申請しており、米国やドイツなどは年間、万単位で難民を受け入れている。

トランプ米大統領は難民の入国を一時禁止する大統領令を出したが、国際社会から激しい批判を浴び、司法も「待った」をかけた。

先進国で受け入れなければ事態の収拾は困難な状況にあるからにはかならない。

これに対して、日本が昨年受け入れた難民は、国際的な取り決めによる別枠のミャンマー難民18人を含めても46人だけである。

政府は今年から5年間、計150人のシリア人留学生とその家族を受け入れる計画だが、欧米各国とは桁が違う。

問題点のひとつに、難民認定の厳しさが挙げられる。申請者数に対する難民認定の割合が、ドイツやカナダでは50%を上回るのに、日本は1%に満たない。

出入国管理と難民保護という、ときに相反する二つの手続きを一つの法律の下、法務省入国管理局が担っていることに無理があるとの指摘もある。

こうした政府の動きの鈍さとは対照的に、民間では難民を積極的に受け入れる企業や大学が出てきている。

国連関係者からは「逆境を乗り越えてきた底力は他の社員の刺激になる」と、人材として高く評価する声もあるほどだ。

消極的な対応を続ける政府は、こうした面にもきちんと目を向けるべきではないか。