難民不認定、続く取り消し 名古屋高裁、今年3件目

(16/10/26 中日新聞)

2016年10月26日 朝刊

ネパール国籍の男性(45)を難民と認めなかった国の処分を取り消す判決を、名古屋高裁が七月に言い渡していたことが分かった。同高裁では今年、難民認定を巡る国の判断を覆す判決が今回の例を含めて三件に上り、全国的に極めて異例だ。いずれも原告の供述の信用性を認めており、難民を支援する弁護士らは「厳しい日本の審査基準に一石を投じる判決」と評価している。

男性は、ネパールの王制打倒を目指す毛派(共産党毛沢東派)の迫害を恐れ、生命の危険を感じて来日。だが名古屋入国管理局は二〇一一年、命を狙われた経緯や場所、時期について「供述に変遷や不明確さがあり、信用できない」として難民と認定しなかった。一審判決はこれにならったが、高裁判決は「信用できる」と判断した。

同じく毛派の迫害を恐れて来日し九月に勝訴したネパール国籍の男性(60)、野党党員として活動中に来日し七月に勝訴したウガンダ国籍の女性(41)=いずれも愛知県在住=も同様に、高裁で逆転判決を受けた。

決め手となったのが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)作成の「難民認定基準ハンドブック」。難民は母国語以外で申請するため、証拠要件を厳格に適用しないよう求める。

男性二人への判決は、ハンドブックの文言を引用し「通訳や質問の仕方で供述が食い違っているようにみられるが、主要な部分で一貫している」と指摘。女性への判決では、直接の引用はないが「供述の一部に裏付けがないことは、国を離れておりやむを得ない。核心部分で一貫している」と、ハンドブックと同様の認定基準で判断した。

法務省によると、国の不認定処分を取り消す判決は昨年が東京、大阪各地裁の計二件、今年は名高裁の三件のみだ(九月末現在)。