難民の危機 掛け声よりも具体策を

(16/9/23 信濃毎日新聞)

第2次大戦後、最悪となった難民危機にどう取り組むか。先日始まった国連総会の重要なテーマだ。

各国首脳による会議が開かれているが、掛け声ばかりが目立ち、実効性のある対策が出てこない。国既社会の本気度が厳しく問われる。

国連総会は初めて難民サミットを開いた。潘基文事務総長は、結束すれば「希望に変えることができる」と各国に訴えた。

難民の受け入れや支援に関し、各国が負担や責任をより公平に分担するとした「ニューヨーク宣言」を採択している。

宣言は各国の具体的な受け入れ人数には触れておらず、法的拘束力もない。努力目標に近く、実効性には疑問符が付く。

オバマ米大統領は首脳級会合を主宰した。難民危機への対応について「人類の試練だ。団結しなけれにならない」と訴えた。

安倍晋三首相を含め、52の国や国際機関のトップらが参加し、各国の難民の受け入れ数を現在の倍にすることなどで合意した。具体的な数字を示したのは一定の成果だが、頻発するテロ事件などで難民への視線が厳しくなる中、合意通りに進む保証はない。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、昨年末時点で紛争や迫害によって強制的な移住を余儀なくされた人は約6530万人に上る。泥沼化するシリア内戦が最大の要因だ。

内戦を巡っては、米国とロシアが主導したアサド政権と反政府勢力の停戦が崩壊の危機にある。米軍などの空爆でシリア政権軍の兵士が死亡し、政権を支援するロシアが強く反発。これ以降、米ロの対立が深まっている。

両国の協調で和平協議の再開につなげるというシナリオは揺らいでいる。シリア内戦を終結させないことには難民は増え続けるだけだ。米ロだけでなく、国連は停戦の維持に努め、和平への道筋を付けなくてはならない。

安倍首相は二つの会合に出席している。国連のサミットでは難民問題で「主導的役割を果たしていく」と強調した。

人道支援や受け入れ国への支援として約2850億円を拠出することを表明。シリア人留学生を5年で150人受け入れる計画を実施する考えもオバマ氏の会合で示したが、これでは主導的役割を果たしてしるとはいえない。

日本はかねて各国から難民受け入れに消極的と批判されてきた。まず、難民への門戸を広げることを考えるべきだ。
(9月23日)