(16/4/15 朝日新聞)
【写真】国内外のNGO関係者らが3月、京都市内で政策提言を議論した=2016年G7サミット市民社会プラットフォーム提供
5月下旬の主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の直前に、国内の市民団体や若者らが独自の「サミット」開催を計画している。政策提言するなどして、各国首脳の議論に市民の声を反映させるためだ。国外のNGOの活動も活発で、外務省はサミット期間中、NGOの活動拠点を設けて対応する。
3月22日、京都市内にアフリカやアジアなど約20カ国からNGO関係者約100人が集まった。
「公衆衛生危機には発生後の対策よりも予防策を重視すべきだ」「脱炭素化をめざし、再生可能エネルギーをさらに進める必要がある」。保健や気候変動、人権など8テーマを議論し、16項目にまとめた政策提言を、伊勢志摩サミットに集う各国首脳の個人代表(シェルパ)に示した。日本のNGO関係者は「サミットの首脳宣言の骨格が固まる前に、ざっくばらんに対話ができた」と意義を話す。
首脳間の議論に市民の声を反映させようとする市民団体の動きは、サミットでは恒例だ。今年は開催直前の5月23、24両日に、三重県四日市市で、内外のNGOやNPOが集う「市民サミット」が行われる。環境や子ども、平和、アフリカなど17程度の分科会を設けて議論し、政策提言を出す。
昨年11月結成の「2016年G7サミット市民社会プラットフォーム」が主導。環境や人権、貧困など多分野にまたがるNGOやNPOの全国横断組織だ。東海3県の市民団体が今年2月に発足させた「東海『市民サミット』ネットワーク」と一緒に準備を進める。サミット時にNGOとNPOの共催で開く「市民サミット」は初めてだという。
同ネットワークの発足に深く関わった松井真理子・四日市大教授は「NGOとNPOの相乗効果で政策提言力が増す。市民サミットでは地域の課題とグローバルな問題を結びつけて議論したい」と期待する。1999年の独ケルン・サミットでは、途上国の累積債務の免除を求めた政策提言が首脳会議で救済策の合意につながった。近年は、サミットの前にシェルパとNGOが対話することが定着しており、政策提言の影響力は増している。
NGO団体によると、伊勢志摩サミットにあわせて開催地に集う内外のNGO関係者は数百人規模になる見込み。外務省は、報道機関の取材拠点「国際メディアセンター(IMC)」(三重県伊勢市)の隣にNGOの活動拠点を設ける。
政策提言の動きは、学生にも広がる。「若者が声を上げることが重要だ」。三重大(津市)3年の山内康史さん(20)は、東海3県の学生約20人と実行委員会をつくり、5月21日に同大で「東海グローバルサミット」を企画。「難民問題から考える人類の共生」「子どもの生きる力の育成」など6テーマを話し合う。高校生から25歳までの若者を対象に参加を呼びかけており、議論の成果を「行動宣言」として発表する。
山内さんは「若者が議論する場があっても、社会に意見を発信することがほとんどなかった。サミットで注目が集まる今こそ、声を届ける絶好の機会だ」。同大では翌22日にも別のグループが、30歳以下の若者で平和や防災などを議論し、提言する「G7ユースサミット」が予定されている。
■「開催反対デモ」計画も
サミット開催に反対するデモも計画されている。
関係筋によると、5月22日に反グローバリズムを掲げる東海地方の団体などが名古屋市内で集会し、その後にデモ行進する動きがある。参加人数は「100人規模」との情報もある。
サミット当日には三重県内でもデモが検討されている。開幕日の26日には津市内で、閉幕日の27日にはサミット主会場の賢島(かしこじま)から約7キロの近鉄志摩磯部駅周辺で、関西地方の団体などがサミット開催に反対する「50人規模」の集会やデモを考えているという。
他県警の応援を含む「デモ対策班」を組織した三重県警によると、正式な申請は出ていない。ただ、津市や志摩磯部駅周辺でデモがあれば、他の団体も合流して参加人数が数百人規模になることも考えられ、当日は要所に警官を配置し、規制線を張るなどの対応を想定しているという。(滝沢隆史、井上昇)
【RAFIQも参加しました。】