(16/2/19 東京新聞)
2016年2月19日 夕刊
難民申請が急増した影響で、認定の可否の結果を待っている人の数が、昨年六月末段階で一万人を超え、過去最多になっていることが分かった。審査に時間がかかり、認定率も極めて低い日本の難民認定制度には批判が根強く、改善を求める声が一層強まりそうだ。
法務省入国管理局によると、難民認定申請の結果を待っているのが四千五百九十人、不認定に対する異議申し立ての結果を待つのが六千二百四十人となり、結果待ち人数は計一万八百三十人に達した。
難民申請が約千二百人だった二〇一〇年では、結果待ちは三千人以下だった。しかし申請は年ごとに増え、昨年はネパール、インドネシア、トルコ、ミャンマーなどからを中心に過去最多の七千五百八十六人となった。それに伴い結果待ちも急増、さらに増えるのは確実という。
審査にかかる平均処理期間は、難民認定申請は八・一カ月(一五年上半期)で、一〇年の一三・九カ月に比べ短縮したが、異議申し立てでは二九・一カ月(同)と、一〇年の一九・九カ月に比べ長期化している。
結果待ちは東京、名古屋、大阪の各入国管理局管轄のものが大半を占めた。申請者が急増している一方で、一五年の難民認定者数は二十七人にとどまっており、支援者らは抜本的な制度改善を求めている。
入国管理局は、一〇年の制度改正で、申請から六カ月が経過すれば一律に就労が認められるようになったことから、出稼ぎ目的の難民申請が急増したと分析、「あまりに申請が増え過ぎて審査が追い付かない。体制の整備を図り、より効率的な審査を進めたい」としている。
◆「必要な人 何年も待たされる」
認定審査に長期間を要する日本の難民制度に関しては、支援団体などから「早急に保護が必要な人々が三年も四年も待たされ苦しんでいる」と懸念の声が上がる一方、就労目的に利用されているとの指摘も出ている。
「住む所もなく、凍えないように一晩中、外を歩き回って体を温めている申請者がいる」。NPO法人「難民支援協会」広報部の田中志穂さんは、難民への偏見や受け入れ拒否の風潮が社会に広まっていると懸念を示し「本当に助けが必要な人が何年も審査を待たされている」と訴える。
法務省は、日本での就労などを目的とした不適切な難民申請が増えているとして、昨年から正当な理由がないと判断した場合は在留や就労を不許可とする運用を開始した。
有識者として法務省で申請不認定の異議申し立てを審査する山田寛さんは「お金を稼ぐために難民申請しようとする例があるのは残念ながら事実」と指摘。借金や近隣トラブルから逃げてきたという理由での申請なども丁寧に審査してきたことが長期化の一因だとの見方を示した。
入国管理局は、明らかに難民に当たらないと判断できる申請者には審査に時間をかけないようにする取り組みも始めている。
<難民認定制度> 難民条約は、人種や宗教、国籍、政治的意見を理由として迫害を受ける恐れがあるとして国外にいる者を「難民」と定義している。日本で難民認定を受けるには申請をし、法務省入国管理局の調査官による面接などの審査を経なければならない。不認定に対する異議申し立てが可能。難民申請は何回でも繰り返し行うことができる。