(19/6/24 信濃毎日新聞)
7080万人―。タイの人口にも匹敵するという途方もない数の人々が、苦堤のただ中にいる。このほど国連が公表した2018年末の難民・週難民数は過去70年で最多となった。この1年で230万人も増えている。人道支援の切実な要請に、世界中から力を集めて応えるべきだ。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が「世界難民の日」(20日)を機に公表した。国外へ逃れた難民は前年から50万人増えて2590万人、難民認定を待つ人は350万人、自国内で避難している人は4130万人いた。驚異的なペースで急増中の南米ベネズエラの難民は一部しか反映しておらず、実際はもっと多い。
シリア内戦が本格化した12年から増え続けている。発生国はシリアが670万人と最多で、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマーと続く。難民の2人に1人は子どもだ。多くは近隣国へ避難し、8割以上を途上国が引き受けている。先進国はわずか15%だ。
中でも日本は「埒外(らちがい)」といえるほど少ない。18年は1万人余の難民申請に対し、認めたのは42人だ。認定せずに人道上の理由で在留を認めた人と合わせても82人にとどまる。認定は増えているが、支援の現場からは「運用が厳格すぎる」との批判が根強い。
UNHCRは、自国への帰還も、避難国での定着もできない人を受け入れる「第三国定住」を働き掛けている。日本も10年から受け入れているが、家族単位で年に30人程度で、5年後に年100人程度を 目指すというレベルだ。
現場は資金不足にあえぐ。UNHCRは18年、食料配給や避難施設の整備、医療・教育支援などの必要額82億ドルに対し、55%しか調達できないと訴えた。日本は同年、世界で5番目に多い131億4千万円を拠出した。日本への期待は大きく、審議の増大に見合った拠出を続ける必要がある。
明るい兆しもある。国内でUNHCRへの寄付が急増している。18年は35億3600万円が集まり、5年前から倍増した。毎月寄付をするサポーターが広まり、寄付額の9割は個人からだという。人々の関心は高まっている。
これに対し、先進国の振る舞いはどうか。米国は世界中に争いの火種をまきながら、一方で自国第一主鏡を貫いて壁を作り、難民や移民を拒んでいる。欧州でも右派政党が躍進し、難民に向けられる視線は冷 たさを増している。自分たちさえ良ければいい、という発想では、難民を救えない。
(6月24日)
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