難民認定 厳しい現実

(19/6/18 読売新聞 コラム「キーボード」)

 「あの時は、ありがとうございました。」5月中旬、戦争や内紛から日本に逃れてきた外国人を支援する大阪市淀川区の市民団体に突然の電話が入った。

 共同代表の田中惠子さん(65)は、すぐにピンときた。約8年半前、迫害を逃れて関西空港に降り立ったエチオピア人男性だと。あの時、自宅に一晩止め、東京入国管理局への難民申請は都内在住の長男が付き添った。

 難民認定された男性は今、関東の衣料品会社で働き、感謝を伝えたいと「大阪」「支援」などのワードを手がかりに番号を探し当てたという。この日が誕生日だった田中さんは「最高のプレゼント」と声を弾ませた。

 田中さんが喜ぶのにはもう一つ訳がある。昨年の難民申請数は約1万人で認定は42人。男性のようなケースは奇跡に近い。

 外国人労働者の受け入れ拡大も指導する中、多文化共生社会の実現に難民受け入れは無視できない問題だ。20日は国連の「世界難民の日」。 (南暁子)