難民認定 門を閉ざし続けるのか

(15/3/13 信濃毎日新聞 社説)

内戦が続くシリアから日本に逃れた男性4人が、難民として認められないのは不当だとして、認定を求める訴訟を来週にも起こす。背景にあるのは、日本の難民認定基準の厳しさだ。

政府は非軍事の国際貢献として難民支援の拡充を言う一方、自国への受け入れの門は狭い。制度を見直し、「難民鎖国」の現状を改めるべきだ。 4人は2011年にシリアで起きた反政府運動に参加。帰国すれば迫害を受けるとして難民認定を申し立てたが退けられた。人道上の配慮から期限付きの在留許可が下り、日本に滞在している。

昨年、日本で難民の申請をした人は過去最多の5千人に達した。認定されたのは11人にすぎない。シリアからは、内戦が始まって以降60人以上が認定を求めたが、認められたのはごくわずかだ。在留許可は下りても、定住資格ではなく、日本語学習や職業訓練などの公的支援も受けられない。

難民条約は、人種や宗教、政治的意見などを理由に迫害を受ける恐れがある人を難民とする。日本は定義を厳密に解釈し、内戦や紛争から逃れた人を難民とは認めていない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の指針などを踏まえ、欧米諸国が多くの難民を受け入れてきたのとは対照的だ。

シリアは、国際テロ組織アルカイダ系の武装組織や、過激派「イスラム国」も入り込んで勢力を争い、内戦収拾のめどが立たない。国外に逃れた難民はおよそ400万人にも上る。

ヨルダン、レバノンなど周辺国での受け入れは限界に達している。国連機関による食糧援助が資金不足から滞る事態も起きた。難民の多くが困窮を深めている。

日本政府は、イスラム国による日本人殺害事件後、中東への人道支援の拡充を表明。既に拠出を約束した2億ドルに加え、ヨルダンなどへ新たな資金協力を決めた。財政的な支援は日本が担うべき役割として重要だ。ただ、それだけでは立ちゆかない状況がある。

遠く日本へ逃れてきた人をなかなか難民として認めない政府の態度はかたくなに過ぎる。周辺国にいる難民を再定住の形で受け入れることも検討すべきだ。

法務省は認定制度の見直しを進めているが、主眼は申請急増の背景にある就労目的での乱用を防ぐことのようだ。乱用に目が向くあまり、認定の門がさらに狭まる心配がある。難民として保護すべき人をきちんと守る、本来の目的を見失ってはならない。