(社説)難民受け入れ 拡大こそ国際貢献の道

(2015/4/7 朝日新聞)

2015年4月7日05時00分

母国に帰れば、社会的に苦しめられ、危険が及びかねない。そんな人々を難民と呼ぶ。

日本は、そうした人たちを守る難民条約の加盟国だが、実際に受け入れた人数は極端に少ない。昨年の認定は11人だ。

1997年以来の1けたに落ち込んだ前年の6人からわずかの増。難民とは認めないまでも人道上の配慮から在留を認めた110人が別にいるが、それでも年間1万人超や数千人規模を受け入れる北米や欧州の国々に比べてはるかに狭き門だ。

条約は、人種や宗教、特定集団に属していることなどを理由に迫害される恐れがある人の保護を求めている。ただ、具体的な解釈や個々のケースの判断は加盟国に委ねられている。

認定のあり方は、各国の基本的人権や自由に対する感覚をはからずも露呈してしまう。
安倍政権は、安全保障政策で盛んに国際貢献を挙げているが、真剣に貢献を言うならば、難民受け入れと正面から向き合うべきだ。

シリアやイラクなど各地で紛争が悪化している国際情勢をみれば、この分野こそ緊急の必要性が高い。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は先月、世界で昨年86万人が先進各国に保護を申請し、過去22年で最多だったことを明らかにした。

うちシリア難民の申請は15万人。地理的に近い欧州各国の受け入れにも、限界がある。
日本ではこの3月、シリア人3人が認定されたが、昨年11月時点では、11年以降に日本に難民申請したシリア人は61人いたが認定はゼロだった。

裁判になっている4人のケースをみても、シリア国内の反政府デモに参加していたり、少数派のクルド民族だったりで、帰国して迫害はないと言い切れるのか疑問がぬぐえない。

迫害のおそれの解釈が厳しすぎるのが問題だ。UNHCRなどの意見も取り入れて、国際基準にそろえる必要がある。

だが、法務省のいまの取り組みは、そうした基準の緩和よりむしろ逆の方向に重きを置いているように見える。年間5千件に及ぶ難民認定申請の中には虚偽のものが増えているとして、手続きを見直そうとしている。

本当に救済が必要な人が後回しになるしくみは改めねばならないが、申請しにくくしたり、申請中の生活を不安定にしたりしては本末転倒だ。

疑うことから始めては、難民認定という制度自体、成り立たない。難民救済という基本的な人道支援は先進国の最低限の責務であることを自覚すべきだ。