「民政移管を」市民デモ続く 独裁政権崩壊のスーダン 軍が警告緊張高まる

(19/5/6 京都新聞)

 4カ月に及んだ反政府デモの末、約30年間のバシル独裁政権が4月、軍のクーデターで倒れたアフリカ北東部スーダン。首都ハルツームの軍司令部前では暫定政権を敷いた軍に対し「民政移管せよ」と求める市民のデモが続く。民主化実現への市民の熱意は高いが軍側は混乱阻止を警告、緊張が高まっていた。

 「自由、平和、正義を」。司令部前では3日、金曜礼拝後に市民が集まり、デモのスローガンを連呼した。スーダン人は大半がイスラム教徒。頭に白い布を巻く男性らが目立つが、女性や子どもの姿も。日中は45度近くに達する灼熱の中、露店や市民組織のテントも設置され、祝祭のような空気が漂っていた。

 「バシルが大統領の座を追われても、軍が権力を握る状況は変わらない。民政実現まで抗議を続ける」。デモ参加者の無職レドワン・アハメドさん(40)が強調する。

 4月11日にバシル氏を拘束した軍は暫定政権を樹立したが市民の不満は消えず、双方は軍属参加の新統治組織の結成で合意した。ただ軍は新組織も主導する方針で、民主化を求める市民側との交渉は膠着状態となった。一方、現地報道によると暫定政権幹部は4月末、地方でデモ隊と衝突があり治安要員22人が死傷したと発表。衝突後も交渉継続の姿勢を示したが「混乱は認めない」と警告した。

 司令部前で座り込みをする市民の間では、軍が力ずくでデモ隊排除に乗り出すのでは、との懸念が強まる。市民と軍兵士が言い争う姿もあった。司令部付近や市内では荷台に機関銃を載せた軍車両が行き来し、緊迫状態がうかがえた。

 アルジェリアでもブーテフリカ長期政権が4月に大規模デモを受け退陣。スーダンの政変と合わせ、2011年の中東民主化運動「アラブの春」の再来との見方もある。

 ただ、11年以降に長期政権が倒れた国の多くは民主化が進まず、体制が強化されたか混乱が残ったまま。デモ波及を恐れる周辺国はスーダン軍を支える方針でバシル氏拘束後、サウジアラビアとアラブ首長国連邦が30億ドル(約3300億円)相当の援助を表明した。

 これに対し、デモ隊は「他国の介入はいらない」と反発する。無職アラディン・アハメドさん(27)は「未来は自分たちで決める。アラブの春が起きた国々と異なり、真の民主化を実現したい。軍の介入は怖くない」と力説。今月から来月までのラマダン(断食月)中もデモをやめないと気勢を上げた。(ハルツーム共同)

【写真】3日、スーダン・ハルツームの軍司令部付近で「自由を」などと連呼するデモ参加者ら
【写真】武器を搭載した軍の車両で通りを行き来する兵士たち=4日、スーダン・ハルツーム(いずれも共同)