(15/4/24 中日新聞)
2015年4月24日
政情が不安定な母国に戻ると迫害の恐れがあるとして、日本政府に難民申請していた愛知県豊川市のネパール国籍の夫婦が、難民と認定されたことが分かった。日本の難民認定率は先進国中で特に低いとして国際的な批判を浴びている。急増するネパール人申請者の認定は、難民問題に取り組む全国難民弁護団連絡会議によると全国初という。
夫婦はケーシー・ディパックさん(35)と妻ムナ・プルザさん(25)で、認定は三月二十七日付。
代理人の笹尾菜穂子弁護士によると、ディパックさんは親王室派の有力政党地方組織の幹部。対立する毛派(共産党毛沢東派)に家を焼かれ、暴行を受けたという。毛派が勢力を拡大し、亡命を決意した。二〇〇七年一月に観光ビザで来日してそのまま滞在、一〇年十月に難民認定を申請した。
名古屋入国管理局を通じた申請では、「ネパール政府が毛派の違法行為を放置していたとは認められない」などとして認定されなかった。一一年五月に異議を申し立て、有識者らでつくる難民審査参与員の審査を経て今回、認定された。
法務省は従来、帰国した場合に本国政府から不当な迫害を受ける具体的、客観的な危険性があると認められる場合などに限って難民と認定してきた。
同省は今回の認定理由を明らかにしていないが、ディパックさんが親王室派の有力一族の出身で迫害の標的になりやすいことや、暴行後に治療を受けた病院のカルテなどの証拠があったことが決め手となったとみられる。ディパックさんは「長い間待っていたのでうれしい。他にも認定が必要なネパール人は多いので、助けてほしい」と話す。
同省によると、昨年の難民申請者は過去最多の五千人だったが認定は十一人のみ。ネパール人の申請は、五年前と比べて十倍以上に急増して千二百九十三人に上り、国別で最多だった。就労目的の申請者が含まれているとの指摘もある。
名古屋難民弁護団事務局長の川口直也弁護士は「ネパール人に難民はいない、との誤解を変えるための第一歩。さらに認定例を勝ち取りたい」と話している。