(17/9/22 西日本新聞 社説)
2017年09月22日10時34分
ロヒンギャとは、ミャンマー西部のラカイン州を中心に暮らすイスラム教徒の少数民族だ。この人々が難民として隣国バングラデシュに逃れる事態が発生し、国連でも北朝鮮問題と並ぶほどの緊急課題として取り上げられている。
ミャンマーは人口の約9割が仏教徒で、ミャンマー政府はロヒンギャを自国の民族と認めず、「不法移民」と位置付けてきた。
今年8月にロヒンギャの武装集団が警察や軍の施設を襲撃したのをきっかけに、武装集団と治安部隊の衝突が激化した。400人以上が死亡し、巻き添えを恐れるロヒンギャ約40万人が国境を越えた。避難民は劣悪な環境下で厳しい生活を強いられている。
避難民の証言などから、政府の治安部隊が混乱の中で、ロヒンギャに過度の暴力を振るっている可能性が指摘されている。国連の人権担当者は「典型的な民族浄化」として強く非難している。
極めて残念なのは、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問が、この問題を事実上傍観してきたことだ。国際社会の失望は大きく、ノーベル平和賞剥奪を求める署名が起きているほどだ。
スー・チー氏の消極的姿勢の背景には、軍との関係がある。国家運営で軍との協力関係を維持するために、軍への批判は避けたいのがスー・チー氏の本音だろう。