(15/6/8 北海道新聞)
06/08 08:50
これは深刻な人道危機である。
ミャンマーで「ロヒンギャ」と呼ばれる少数民族の人々が粗末な密航船で周辺国に相次いで漂着し、国際問題となっている。
今も漂流中の人々が多数いるとみられる。救援を急ぎたい。
先月下旬、タイでロヒンギャの支援策を協議する関係国会合が開かれた。マレーシア、インドネシアは一時保護は容認しているが、各国とも恒久的受け入れには消極的で解決策は見いだせなかった。
相次ぐ密航の背景にはロヒンギャに対する差別や迫害の歴史がある。ミャンマー政府は隣国バングラデシュからの不法移民と主張し、国民と認めていない。
民主化を進めているミャンマーは、ロヒンギャの人権を尊重し、差別解消に努めるべきだ。
ロヒンギャは主にミャンマー西部ラカイン州に居住し、人口は約80万人と推計されている。
仏教徒が9割の同国では少数派のイスラム教徒だ。古くから当地に暮らしていた人々に加え、19世紀以降、バングラデシュから移住した人も少なくないとされる。
軍事政権下の迫害で多く力領住民化した。民政移管後の2012年には仏教徒との衝突が激化し、政府によって14万人が避難民キャンプに収容された。同年以降、10万人以上が国外に逃れたという。
窮状から脱したいと密航する人々は後を絶たない。国連は先月、ロヒンギャら数千人が漂流しているとして周辺国に保護を求めた。
漂流船の増加は、タイ当局の取り締まり強化と関係ありそうだ。
タイ国内でロヒンギャの「集団墓地」が見つかり、密航に関わり組織的な人身売買と虐待が明らかになった。マレーシアでも同様の墓地や収容所が見つかっている。
タイでは軍幹部の関与が摘発された。徹底的な捜査で密航・人身売買ビジネスを撲減すべきだ。
だが何と言っても根本的な解決策は、ロヒンギャの人々がミャンマーで差別や貧困に苦しまず、平和に暮らせるようになることだ。
大半は何世代もミャンマーで暮らす人々である。政府は国籍を与えるべきではないか。
国民の問でもロヒンギャへの偏見は根強い。長年、差別を是認してきた政治のツケだろう。国民融和への努力が欠かせない。
多民族国家のミャンマーが民主化を成功させるためには少数者の権利擁護は避けて通れない道だ。
日本をはじめ国際社会は、ミャンマーの民主化促進に向けて働きかけを強めていくべきだ。