(12/2/16 東京新聞)
【メソト(タイ北西部)=寺岡秀樹】日本政府は十五日、タイ北西部メソトで、日本移住を希望するミャンマー難民の面接を始めた。受け入れが決まれば九月末ごろ来日する。
二〇一〇年から試験的に始めた「第三国定住」制度に基づくもので、最終年となる今回は二家族十人が希望し、うち九人が面接を受けた。政府は当初、九十人を受け入れる予定だったが、今回の十人を含めても受け入れ人数は五十五人にとどまることになった。
十人は少数民族カレン人で、ミャンマー国境近くのタイ国内最大のメラキャンプで生活する。来日希望者の中から国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が事前に保護の必要性を判断し、日本側に推薦していた。
受け入れ人数が目標を大きく下回ったことについて、法務省入国管理局難民認定室は「検証の必要がある」とした。
【解説】厳格条件見直し必要
日本が試験導入した「第三国定住」制度。ミャンマー難民の受け入れ数は年々減り、目標を大きく下回ることになった。新たな難民政策を探る試みという意義が生かされたとは言い難い。
「日本に行くのは難しい」。こんなうわさがメラキャンプで広がっているという。原因は受け入れ条件の厳しさだ。
日本政府は家族連れに限定し、独身者や高齢者、子どものいない夫婦は採用していない。
法務省は「就職して定住が見込まれるのは支え合える環境の人」としているが、最初から”狭き門”とせず、広く受け入れる選択肢はなかったか。
また、来日審査は法務省、生活支援は外務省、就職は厚生労働省の管轄で、省庁ごとに取り組みに温度差がある。難民が直面する問題に政府が柔軟に対応できていたとは言えない。
タイの難民キャンプから昨年八千人を受け入れた米国に比べ、年間三十人とした受け入れ枠の少なさや情報開示の消極性から、制度の実効性には当初から疑問の声が上がっていた。検証と計画の抜本的見直しが必要だ。
(タイ・メソト、寺岡秀樹)