難民対応の厳格化 救済されるべき人を守れ

(18/3/5 中国新聞 社説)

2018/3/5

今年に入って法務省は難民制度の運用を変更した。申請者に対し、一律に認めてきた在留や就労を制限し始めたのだ。

背景には、日本で働くために難民申請をする外国人が急増している実態がある。そのために迅速な認定審査に支障を来しているという。

「就労目的難民」への対策として制度の厳格化が必要なのかもしれない。一方で、日本の難民認定者数は他の先進国に比べて極端に少なく、国際社会から「難民鎖国」と批判されてきた現状も考慮する必要があるのではないか。

制度を厳格化することで、本当に難民として保護、救済されるべき人々が排除されることなく、しっかり手を差し伸べられるよう配慮せねばならない。

日本は2010年に制度を改正した。難民申請から6カ月たてば、認定審査中であっても一律に就労を認めてきた。申請中も自活できるように、との配慮からだ。

その措置の導入に伴い、申請者は増え続けてきた。10年には1202人だったのが、16年には1万人を超えている。法務省入国管理局が先月発表した速報値によると、昨年はさらに8727人増え、1万9628人にも上っている。

日本で申請すれば働ける、と誤解されて情報が広まった―。法務省は申請者の増加の背景をそうみている。母国での借金トラブルから逃れるためなど、認定理由に当たらない申請が目立つという。そのために本当に保護すべき人たちへの対応に支障が出ているとして、制度の厳格化に踏み切った。

新たな制度では、2カ月以内に簡単な審査を行い、申請者を分類する。明らかに難民でない人や申請を繰り返す人には就労を認めず、強制退去の手続きを進めていく。

「受け入れを消極的にする趣旨ではない」と上川陽子法相は強調した。難民の可能性が高い人には、速やかに就労可能な在留資格を与えるという。

だが先の入国管理局の速報値によれば、昨年の申請者1万9628人に対し、認定は20人。千人に1人ほどにとどまる。誤解に基づく就労目的が多いとしても、毎年数千人から数万人を受け入れる欧州諸国に比べて、あまりに低い。

諸外国よりも厳しいとされる日本の難民認定の在り方が、原因の一つと考えられる。

政治的意見や宗教を理由にした母国での迫害の事実を、申請者本人に証明するよう求めている。だが生命の危機に直面し、迫害を立証する資料などを十分に持たずに逃れてきた人が大半なのではないか。配慮が不十分な審査では、本来保護すべき人を排除する恐れがある。

申請を繰り返してやっと難民認定される人も少なくないという。何度も申請したからという理由で就労を制限すれば、保護されるべき人を困窮させたり、強制退去に追い込んだりすることになりはしないか。

制度の厳正化とともに、きめ細かな対応や、審査方法の是正が求められる。

増え続ける難民申請だが、内戦が続くシリアからは7年間で81人と少ない。難民条約上の難民には当たらないものの、紛争を逃れてきた人々への対応も、早急に検討せねばならない。