シリア難民:4人が認定求め提訴「法相処分、重大な誤り」

(15/3/17 毎日新聞)

毎日新聞 2015年03月17日 21時00分

内戦の激化で390万人以上が難民となっているシリアから逃れたものの、日本で難民と認定されなかったヨセフ・ジュディさん(31)らシリア人男性4人が17日、国を相手に難民として認めるよう求めて東京地裁に提訴した。弁護団によるとシリア人による難民認定訴訟は初めて。難民と認めなかった法相の処分について「シリア情勢の把握などに重大な誤りがあり無効」と主張している。

4人はいずれも2012年に来日し難民申請した。13年に「迫害のおそれがあるとは認められない」として不認定処分が出されたものの、人道配慮による在留が許可された。

訴状によると、ジュディさんら3人は少数派のクルド民族、もう1人は出身地域が反政府的とみなされている。4人はいずれもシリアで反政府デモに参加しており、迫害を受ける可能性が高いとしている。

難民認定されると日本語教育などの定住支援を無料で受けられる。東京都内で弁護団と記者会見したジュディさんは、妻と幼い2人の子どもは日本語が分からず外出もままならないと話し、「難民ではないので身分が不安定です。子どもの将来のため難民として認めてほしい」と訴えた。

法務省入国管理局は「訴状の内容を検討して適切に対応したい」と話している。【吉富裕倫】

  ◇際立つ日本の消極姿勢

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、390万人以上が難民となったシリア内戦は「今世紀最悪の人道危機」だとして、各国に難民支援などの協力を求めている。

主要7カ国(G7)の多くはシリア人を積極的に難民として受け入れている。昨年上半期のUNHCRの集計によると、難民認定率は米国が96%、カナダは95%、英国も90%。密航が多いとされるイタリアも43%を難民認定しており、同時期に0%だった日本の消極姿勢が際立っている。

トルコやレバノン、ヨルダンなどシリア周辺国に難民が集中しているため、28カ国がこうした人々を自国で受け入れる「第三国定住」などを表明している。G7でこうした対策を表明していないのも日本だけだ。

日本は昨年12月に初めて3人のシリア人を難民認定したが、認定率は各国に遠く及ばない。原告側は訴訟を通じ、国際的に厳し過ぎると指摘される認定基準のあり方を問うだけでなく、日本が難民条約加盟国として国際的責任を果たしているのか、問題提起したい考えだ。【吉富裕倫】

  G7のシリア難民受け入れ状況

 

難 民
認定率
周辺国からの
難民の受け入れ表明
日 本 0% なし
米 国 96% 上限なし(実績で1万715人)
英 国 90% 社会的弱者を対象(同143人)
フランス 54% 1000人(同約1400人)
ドイツ 74% 3万人
イタリア 43% 450人
カナダ 95% 1万1300人

UNHCRまとめ(難民認定率は2014年上半期の1次審査結果など、受け入れ表明は13年以降)